「シームレス通信環境のためのコンテキスト情報を利用した ネットワーク・アプリケーション制御機構」 [論文誌Vol.46, No.9, pp. 2236-2249 (2005)]
平成17年度論文賞受賞者の紹介
「シームレス通信環境のためのコンテキスト情報を利用した ネットワーク・アプリケーション制御機構」 [論文誌Vol.46, No.9, pp. 2236-2249 (2005)]
[論文概要]
異なる無線ネットワークをユーザが意識することなく柔軟に利用できるシームレス通信環境の実現に向けて,ユーザニーズを把握するための体験型アンケート調査を実施し,シームレス通信機能やプレゼンス機能に対する強いユーザニーズを明らかになった.これを踏まえ,コンテキスト情報を利用したネットワーク・アプリケーション制御機構を設計・実装した.本システムはコンテキストとしてユーザのプレゼンス,位置,各ネットワークの状態や端末の能力などの情報を利用することで,ネットワーク切り替え機能だけを提供する場合よりも,相手の状況やネットワーク状態などをユーザが意識する必要性が低下し,通信に集中できる環境を提供できることを明らかにした.
[推薦理由]
本論文はマルチメディア通信システムにおいて、物理的な低いプロトコル階層の状況から、ユーザの状況や性質を含む高いプロトコル階層の状況までを判断して、ユーザが意識することなく自動的に通信手段やアプリケーションを選択し、シームレスな通信を実現するシステムについて述べたものである。100人規模のユーザの要求の調査、ユーザの要求を満たすと思われるシステムの実装およびその実装の評価が行なわれていて信頼性が高い。また実装されたアプリケーションの完成度も非常に高い。モバイル環境に対するニーズはさらに高くなると考えられることから意義も大きい。以上の理由により、本論文を受賞論文に推薦する。
井上 真杉 君 情報通信研究機構新世代ネットワーク研究センターネットワークアーキテクチャグループ研究マネージャー.1992年京都大学工学部電気工学第二学科卒業.1997年東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了.博士(工学).1997年より郵政省通信総合研究所(現独立行政法人情報通信研究機構)勤務.2000年~2001年米国ポリテクニック大学客員研究員.2002年から4年間新世代モバイル研究開発プロジェクトに所属.無線アクセスプロトコル,超高速無線LAN,シームレスネットワーク等の研究に従事.
マハムド カレド 君 バングラデッシュ North South大学コンピュータサイエンス工学科助手.1991年バングラデッシュ工業大学電気・電子工学科卒業.2000年静岡大学電気電子工学科博士課程修了.2000年から2004年まで情報通信研究機構(NICT)に勤務.流星バースト通信,変復調方式,移動通信システムに関する研究に従事.
村上 誉 君 情報通信研究機構ユビキタスモバイルグループ研究員.1997年北海道大学工学部電子工学科卒業.1999年同大学大学院修士課程修了.同年郵政省総合研究所(現独立行政法人情報通信研究機構).2003年~2005年デンマーク国オールボー大学客員研究員.無線通信プロトコル,インターネットプロトコルに関する研究に従事.
長谷川 幹雄 君 情報通信研究機構ユビキタスモバイルグループ主任研究員.1995年東京理科大学基礎工学部電子応用工学科卒業.2000年同大学大学院博士課程修了.博士(工学).1997年~2000年日本学術振興会特別研究員(DC1).2000年郵政省通信総合研究所(現独立行政法人情報通信研究機構)入所.カオス、ニューラルネットワーク、モバイル・ユビキタスネットワークに関する研究に従事.
森川 博之 君 東京大学大学院新領域創成科学研究科基盤情報学専攻助教授.2002年より4年間情報通信研究機構モバイルネットワークグループグループリーダを兼務.1987年東京大学工学部電子工学科卒業.1992年同大学院博士課程修了.工学博士.1997年~1998年コロンビア大学客員研究員.コンピュータネットワーク,ユビキタスコンピューティング,モバイルネットワークなどの研究に従事.