「OMSPレスポンダ:グループ署名における失効メンバ確認モデル」[論文誌Vol.47, No.3, pp. 932-944 (2006)]

平成18年度論文賞受賞者の紹介

「OMSPレスポンダ:グループ署名における失効メンバ確認モデル」[論文誌Vol.47, No.3, pp. 932-944 (2006)]

[論文概要]
 グループ署名方式は、グループに所属するメンバーが、グループのメンバーであることを示せるが個人が特定されない署名を生成できる署名方式である。グループ署名方式ではまた、特別な権限を持つグループ管理者が、署名を生成したメンバーを特定する機能を備える。グループ署名は匿名性を有するため、メンバーを失効させるのが難しい。本論文ではグループ署名方式に対し、グループメンバーが有効であるか失効しているか応答する特別なエンティティ(OMSP レスポンダ)を導入した失効メンバー確認モデルを提案し、本モデルに基づく失効メンバー確認方式を提案する。本方式はグループ署名方式の署名者特定機能を利用しているため、任意のグループ署名方式に対して適用できる。


[推薦理由]
 本論文は、グループ署名を実用化する際に問題となりうる失効者リストの管理に対して現実的な解決策を示している。公開鍵証明書における同種の問題に対して提案されているOCSPを、グループ署名に対応して拡張し、その安全性を厳密に議論している。提案方式は任意のグループ署名方式に対応しており、この方式を利用することによりグループ署名の実用化に向けた具体的な道筋が示されるといえる。さらに、本発表の結果に基づく更なるグループ署名研究の進展が期待できる。暗号理論の実用化に関する新規性と完成度を備えた論文である。よって本論文を論文賞に推薦する。
 

米沢 祥子 君 平成13年お茶の水女子大学理学部情報科学科卒業。平成15年東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻修士課程修了。同年日本電気(株)入社。現在、同社共通基盤ソフトウェア研究所にて、暗号プロトコル、特にグループ署名技術の研究開発に従事。

佐古 和恵 君 昭和61年京都大学理学部数学科卒業。同年日本電気(株)入社。現在、同社共通基盤ソフトウェア研究所主席研究員。博士(工学)。電子投票・電子入札・電子抽選など暗号プロトコルの研究に従事。情報処理学会・電子情報通信学会・IACR会員。