「素性論理に基づくXML文書ルール記述言語DRDLとインターネット文書交換システムへの応用」[論文誌Vol.47, No.3, pp. 751-764 (2006)]

平成18年度論文賞受賞者の紹介

「素性論理に基づくXML文書ルール記述言語DRDLとインターネット文書交換システムへの応用」[論文誌Vol.47, No.3, pp. 751-764 (2006)]

[論文概要]
 インターネット上の文書交換システムにおけるXML文書の検証、変換、およびデータベース連携などのXML処理機能を実現するための文書ルール記述言語を提案している。XML文書の要素内容間の制約は、通常のプログラム言語で手続き的に表現すると、複雑で直感的理解が困難な記述になりやすく、半定型的な業務帳票等がもつ多様性・変易性への対応が難しくなる点に課題がある。本論文では、自然言語の文法記述で用いられる素性論理をベースに、実システムで必要となる範囲の制約を簡明に記述できる言語とその作成支援系を開発し、実際の適用事例に基づき、開発・保守効率等に関する有効性を報告している 。

[推薦理由]
 XMLは多くの分野で標準フォーマットとして用いられるようになったが、とりわけ電子商取引や電子申請などの応用においては、処理の自動化推進のため、XML 文書の内容に関する規約(ルール)の記述とその検証が重要である。本論文では、自然言語処理分野で用いられる素性論理に基づいた新たな文書ルール記述言語(DRDL; Document Rules Description Language)を提案している。これにより、既存の技術では不可能だった、異なる要素内容の間のルール、あるいは要素内容と文書の構造に関するルールの表現と検証が可能になった。さらにDRDLに基づくアプリケーション開発フレームワークを開発し、実際の応用に適用した上で、その有効性を示している。この論文は、XML文書内容のルール記述と検証の問題に対し、理論と実践の両面から包括的にアプローチした極めて完成度の高い研究であると言える。以上の理由により、本論文を論文賞に推薦する。

今村 誠 君 1986年京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修士課程修了。偏微分方程式等を学ぶ。同年三菱電機(株)入社。自然言語対話、知識表現、ユーザインタフェース、CALS/EC用構造化文書処理(電子マニュアル、電子部品情報共有、設計支援ワークフロー、電子申請、Web-EDI、設備維持管理等へ適用)、情報検索、テキストマイニング等の研究開発に従事。2001年度(社)日本電機工業会 電機工業技術功績者発達賞、第63回本学会全国大会優秀賞、2004年度山下記念研究賞(情報学基礎)を受賞。

渡邉 圭輔 君 1993年東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程終了。同年三菱電機(株)入社。同社情報技術総合研究所にて、音声認識、音声対話、文書処理の研究開発に従事。日本認知科学会各会員。

増塩 智宏 君 2000年東京工業大学大学院総合理工学研究科修士程了。同年三菱電機(株)入社。文書処理、Webシステムの研究開発に従事。現在、ソニー株式会社に勤務。

渡部 明洋 君 1969年三菱電機(株)入社。電力会社の発電監視・制御のSEを担当後、ミニコンピュータ(MELCOM70)のOS開発、UNIX-OSの日本語(EUC)化、官の電子申請第一号のJETRAS開発、ニューロを活用した医療診断システムなどの開発に従事。その間、CALS委員会などでSGML、STEP等を担当。