「感性語を媒介にした香りコミュニケーションモデル」[論文誌Vol.47, No.12, pp. 3414-3422 (2006)]

平成19年度論文賞受賞者の紹介

「感性語を媒介にした香りコミュニケーションモデル」[論文誌Vol.47, No.12, pp. 3414-3422 (2006)]

[論文概要]
 オープンな香りコミュニケーションシステムを構築するにあたって,香りの基底が発見されておらず,香り情報を一意に表現する方法がないため,送り手側と受け手側との間で正確な香り情報を交換するのは極めて困難である.この問題に対する一つのアプローチとして,映像や音声の雰囲気を伝える香りである背景香の概念を導入し,背景香の通信に香りの印象を表現する形容詞(香りの感性語)を用いるコミュニケーションモデルを提案した.実験の結果,背景香として異なる香りを用いても,これらの香りに対応する感性語の距離が近い場合,映画の印象を同じように増す効果があることが確認できた.

[推薦理由]
 本論文は,遠隔地間の「香りの伝達」のために,感性語を媒介したコミュニケーションモデルの提案に関する論文である.近年,五感情報通信は注目を集めているものの,嗅覚情報の伝達は,香り情報の表現手法が確立されていないため困難である.本論文で提案されたオープンな香りコミュニケーションモデルでは,送信側が感性語を用いた抽象的な香りの表現を用い,受信側は各人の香り発生装置を用いることで,香りの伝達を行うことが可能となる.映像とともに香りを提示する実験を行い,適切な香りの提示を行うことにより,映像の印象を増すことを示した.システムそのものはプロトタイプ段階ではあるが,「香りの伝達」という新しい領域を切り開く
高い新規性を示しており,論文賞に値する.

坂内 祐一 君  1980年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了.1988年ミシガン州立大学コンピュータサイエンス学科修士課程修了.2007年慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了.博士(工学).1980年キヤノン(株)入社.画像処理,ヒューマンインタフェース,グループウェア,複合現実感等の研究開発に従事.ICAT’07最優秀論文賞受賞,日本VR学会会員.

石澤 正行 君  2005年慶応義塾大学理工学部情報工学科卒業,2007年同大学院理工学研究科修士課程修了,2007年キヤノン(株)入社.現在同社においてヒューマンインタフェースの研究開発に従事

重野 寛 君  1990年慶應義塾大学理工学部計測工学科卒業.1997年同大学大学院理工学研究科博士課程修了.現在,同大学理工学部情報工学科准教授.博士(工学).ネットワークプロトコル,ネットワークセキュリティ,マルチメディアアプリケーション等の研究に従事.著書「コンピュータネットワーク」(オーム社) 等.電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.

岡田 謙一 君  慶應義塾大学理工学部教授,工学博士.専門は,CSCW,グループウェア,ヒューマン・コンピュータ・インタラクション.現在,情報処理学会MBL研究会運営委員,BCC研究グループ主査,日本VR学会理事,CS研究会委員長.情報処理学会論文賞(1996,2001),情報処理学会40周年記念論文賞,日本VR学会サイバースペース研究賞,IEEE SAINT’04最優秀論文賞を受賞.情報処理学会フェロー.