「マウスによる仮想折り紙の対話的操作のための計算モデルとインタフェース」[情報処理学会論文誌 Vol.48, No.12, pp.3658-3669]
平成20年度論文賞受賞者の紹介
「マウスによる仮想折り紙の対話的操作のための計算モデルとインタフェース」[情報処理学会論文誌 Vol.48, No.12, pp.3658-3669]
[論文概要]
本論文ではマウスのみでも直感的,対話的に複雑な三次元折り紙形状をモデリングできる計算モデルとインタフェースを提案している.折り紙の面の形状とつながりを計算する際にバネモデルを用いており,多彩な形状を表現することが可能となっている.また,マウスのみで直感的に面の分割や回転操作を行うための,2Dドローツールを参考にした折れ線生成インタフェースや,面を折り曲げる際の回転軸,回転角を決定するための手法も提案している.実際に本手法を計算機上に実装し,これまでモデリングすることが難しかった複雑な形状,折り操作を計算機上で再現できることを確認した.
[推薦理由]
本論文は、計算機内でインタラクティブに折り紙を折るためのシステムに関して紹介したものである。折り紙を計算機で扱う試みは多数存在しているが、多くのものはオフラインで形状を計算するものであり、インタラクティブに操作するものはあまり存在していない。先行研究として存在するインタラクティブな折り紙システムは、単純な幾何学的関係をもとに計算するものであり、本論文のようにばねモデルを用いて紙の複雑な動きを再現したものではない。このような点か ら、本論文には新規性が認められるといえる。また、提案手法を実際に動作する実働システムとして実装し、折鶴などの複雑な折り紙を実際に表現できることを 示すなど、論文としての完成度も高い。以上の理由により本論文を論文賞に推薦する。
古田 陽介 君 1983年 生.2006年 名古屋市立大学芸術工学部視覚情報デザイン学科卒業.同年 筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻 博士前期課程 入学.2008年 同後期課程入学 兼 科学技術振興機構 五十嵐デザインインタフェースプロジェクト 研究補助員
木本 晴夫 君 1973年大阪大学基礎工学部卒業.1975年同研究科修士課程終了.同年日本電信電話公社(現NTT)入社.以来,情報検索,感性検索,画像解析,色彩印象分析の研究開発に従事.現在,名古屋市立大学大学院芸術工学研究科教授.博士(工学).1998~2000年情報処理学会情報学基礎研究会主査.情報処理学会平成10年度山下記念研究賞受賞.
三谷 純 君 2004年東京大学大学院修了 博士(工学).同年独立行政法人理化学研究所 基礎科学特別研究員.2005年筑波大学 講師,現在に至る. コンピュータグラフィックスおよび立体紙模型の展開図作成などの研究に従事.2002年に紙工作用ソフトウェア「ペパクラデザイナー」を開発.2006年からは科学技術振興機構さきがけ研究員として折紙に関する研究を推進している.
福井 幸男 君 1973年京大工学部精密工学科卒業,同年,日立製作所に入社.1980年東大大学院機械工学修士課程修了,同年,通産省工業技術院製品科学研究所に入所.1988年筑波大学教授電子・情報工学系に転任.改組に伴い2004年筑波大大学院システム情報工学研究科教授,現在に至る.形状処理,設計支援,人工現実感等の研究に従事.博士(工学)