松本 裕治 君

2019年度功績賞受賞者の紹介

松本 裕治 君 (まつもと ゆうじ)

松本 裕治

 本会正会員松本裕治君(フェロー)は,永年にわたり,自然言語処理の研究に携わり,当該分野を国際的に牽引してこられました.
 自然言語処理において,形態素/統語解析,語彙知識獲得,機械学習に基づく言語処理など一貫して基盤技術に関する研究を推進し,計算言語学・自然言語処理分野を代表する研究者の1 人として数多くの先駆的な業績を挙げるとともに,多数の優秀な人材の育成に貢献されています.また,基礎研究にとどまらず,種々の言語解析システムを開発し,共有可能なツールとして公開してきました.特に,形態素解析システム「茶筌」は,多くの研究開発環境で利用されており,日本語形態素解析の定番といえます.同君の自然言語処理システムの研究開発と共有化に関する努力は,我が国における自然言語処理研究,ひいては多くの関連分野に貢献されました.
 経歴としては1979 年に京都大学を修士で修了し,電子技術総合研究所(現,産業技術総合研究所)に入所した後,1984 年には英国インペリアルカレッジ計算学科の客員研究員として論理プログラミングの研究を進め,1985 年には(財)新世代コンピュータ技術開発機構の研究室長代理,1988 年からは京都大学の助教授,1993 年からは奈良先端科学技術大学院大学の教授として着任され,さまざまな研究を進められました.
 これらの卓越した研究業績は,ASTEM ソフトウェア文化賞,日本OSS 貢献者賞,本会フェロー,ACL Fellow や本会を含む複数の学会での論文賞などを受けており,国内外で高く評価されています.また,言語資源協会理事,本会自然言語処理研究会主査(1998 年度~ 2001 年度),本会理事(2004 年度~ 2005 年度),フェロー(2005 年度)等の要職を歴任され,計算言語学・自然言語処理分野における国際的なリーダーとして当該分野を牽引されました.
 以上のように,同君が,国内外の情報処理分野の発展と教育・研究,ならびに本会の活動の発展に尽くされた功績は,まことに顕著であります.