松岡 聡 君

2021年度功績賞受賞者の紹介

松岡 聡 君 (まつおか さとし)

松岡 聡

 本会正会員松岡聡君は,永年,高性能計算技術の研究開発を牽引し,優れた研究業績をあげてこられました.東京工業大学においては,同大学の学術国際情報センターが設置・運営するスーパーコンピュータTSUBAME シリーズの研究開発を主導されました.スーパーコンピュータTSUBAME は世界に先駆けてGPU を演算性能向上のために採用し,その後のスーパーコンピュータの開発に大きい影響を与えました.現在,米国を始めとする主要なスーパーコンピュータがGPU を演算性能を向上させるための主要デバイスとして装備するものになっており,これを先導した開発は特筆するべき業績です.TSUBAME においては,省電力を含む数々の指標で世界のトップランクを獲得するとともに,並列アルゴリズムやプログラミング,耐故障性,省電力化,ビッグデータやAI との融合などの広い分野において優れた業績をあげられ,2011 年にはTSUBAME でのアプリケーションにより米国計算機学会ACM ゴードン
ベル賞,2012 年文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門),2014 年大川出版賞を受賞されています.本会では,論文賞,坂井記念特別賞を受賞されており,調査研究運営委員会委員,論文誌ハイパフォーマンスコンピュー
ティングシステム,論文誌プログラミング各編集委員,研究会運営委員を歴任され本会の発展に貢献されました.
 2018 年に理化学研究所計算科学研究センターのセンター長に着任し,開発中であったスーパーコンピュータ「富岳」の稼働,各種ベンチマークによる世界1 位のランキング獲得,共用開始,を責任者として主導し,2020 年の共用開始前においては,開発前の「富岳」の一部を利用して,COVID-19 対策課題を立ち上げ,大きな成果の創出に貢献されました.特に,この課題の中で実施されたCOVID-19 の飛沫シミュレーションの結果は多くのメディアに取り上げられ「富岳」の認知度向上に大きく貢献されました.なお,この成果は2020 年ゴードンベル賞特別賞を共同受賞しています.
 国際的には,多くの著名な国際会議のChair を歴任し,国際的な第一人者として活躍され,2011 年米国計算機学会ACM・フェロー,2014 年,スーパーコンピュータ分野の最高峰賞であるIEEE Sidney Fernbach 賞を日本人としては初めて受賞,2019 年にはSCAsia 2019 にてAsia HPC Leadership Award を受賞,するなど,数々の国際的な賞を受賞されています.
 以上のように,同君が我が国のみならず世界的な高性能計算技術に多大なる貢献をするとともに本会の発展に尽力された功績は
誠に顕著であります.