2007年度詳細

2007年度(平成19年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,これまでは研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は33研究会の主査から推薦された計46編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,第528回理事会(平成19年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の受賞者は下記46君で,3月13日に筑波大学で開催される第70回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HI CG IS FI AVM GN DSM DD MBL CSEC ITS QAI(該当なし) EVA UBI

<フロンティア領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP GI EC(該当なし) BIO

コンピュータサイエンス領域

●N.M-gram:ハッシュ値付きN-gram法による転置インデックスの実現
[2006-DBS-140(2006. 7.13)] (データベースシステム研究会)

平林 幹雄 君 (正会員)

2001年3月 立命館大学政策科学部卒業。
2001年4月 富士ゼロックスに入社。IPAの2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業においてスーパークリエータに認定。
2006年6月よりミクシィに移籍し、研究開発に従事。現在はデータベースや検索システムの改良を手がけるとともに、mixi内のコンテンツを対象としたデータマイニングシステムの構築を行っている。

[推薦理由]
情報検索の分野においてはN-gram法が広く用いられている.N-gram法は日本語のように単語に分割されていない言語であっても,検索が可能になる方式である.しかし,抽出するトークンの数が膨大になるため,転置インデックスのサイズが肥大化して空間効率が悪化する欠点があった.この問題に対し,本論文では,転置ファイルへの格納時に必要だった文書の出現位置の情報を,隣接トークンへのハッシュ値を用いることで,文書サイズに寄らず少ないデータサイズでの転置ファイルの作成を実現している.本方式は,すべての検索エンジンの基幹になる技術であり,有用性も極めて高く,山下記念賞の受賞に値すると考え,推薦するものである.
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●プログラムソースコードのための品質測定と評価の枠組み
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2006(2006.10.20)] (ソフトウェア工学研究会)

鷲崎 弘宜 君 (正会員)

1976年生.03年早稲田大学大学院博士課程修了,博士(情報科学).02年同大学助手,04年国立情報学研究所助手.現在,同研究所助教.再利用と品質保証を中心としたソフトウェア工学の研究と教育に従事.他の活動に日科技連SQiP研究会運営小委員会副委員長,同研究会演習コース主査,情報処理学会ソフトウェア工学研究会幹事など.
04年日本ソフトウェア科学会高橋奨励賞,06年情報処理学会SES2006優秀論文賞.
情報処理学会,電子情報通信学会,日本ソフトウェア科学会, IEEE,ACM,Hillside Group各会員.

[推薦理由]
近年規模が拡大している組込みソフトウェアに関し最終成果物のプログラムコードを対象に,本論文は、各種ソースプログラム解析によるメトリクスをまとめて、信頼性、保守性、再利用性等を統合した定量的品質特性を求める枠組とツールを提案している。各メトリクスの測定値から独自の正規化を使って、品質項目毎/プログラムモジュール毎の評点を得て、品質管理者だけでなく開発者にも有益な情報となる。品質測定結果を評価する際の評定基準の導出も簡便化しており,有用性が高い.さらに実際の組込みソフトウェアを用いた評価実験を行い,提案する品質測定環境の定性的評価と定量的評価を実施しており,その有効性も十分に示している点も評価できる.
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● 依存情報を用いた命令グループ化による動的命令スケジューリング 機構の電力削減手法
[2006-ARC-168(2006. 6. 8)] (計算機アーキテクチャ研究会)

佐々木 広 君 (学生会員)

2003年 東京大学工学部計数工学科卒業
2005年 同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了
現在、同大学院工学系研究科博士課程在学中

[推薦理由]
本論文は、命令間の依存関係に着目し、複数の命令をグループ化するというアイデアによって、近年のハイエンドなマイクロプロセッサにおいて非常に消費電力の大きい構成要素である動的命令スケジューリング機構のハードウェアおよび消費電力の削減手法を提案している。その着眼点の独創性は高く評価される。また、論文中ではシミュレーション評価により提案手法の有効性も客観的に示している。以上より、着眼点の面白さと研究の完成度の両面で、本研究を山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する。
 
●3次元IC向けFat TreeベースNetwork-on-Chips
[2007-ARC-171(2007. 1.23)] (計算機アーキテクチャ研究会)

松谷 宏紀 君 (学生会員)

平成16年 慶應義塾大学環境情報学部卒業.
平成18年 同大大学院理工学研究科開放環境科学専攻修士課程修了.
現在,同大大学院理工学研究科開放環境科学専攻博士課程.
平成18年度より日本学術振興会特別研究員.
チップ内ネットワークの研究に従事.

[推薦理由]
今後、利用が期待される3次元IC上でTreeベースのネットワークオンチップを実装する方法を提案し、その面積と転送エネルギーを評価している。今までほとんど研究が行われていない領域であるが、巧みに3次元方向の配置を工夫することで、配線距離を短くし、効果的な実装に成功している。また、実チップを考慮した現実的な評価を取っている点が高で完成度も高い。以上の理由から,本論文を山下記念研究賞に推薦する。
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●オーバレイ構築ツールキットOverlay Weaver
[先進的計算基盤システムシンポジウム2006(2006. 5.23)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

首藤 一幸 君 (正会員)

1996年早稲田大学理工学部情報学科卒業.1998年同大学メディアネットワークセンター助手.2001年同大学大学院理工学研究科情報科学専攻博士後期課程修了.同年産業技術総合研究所入所.2006年ウタゴエ(株)取締役最高技術責任者.博士(情報科学).
分散処理方式,プログラミング言語処理系,情報セキュリティ等に興味を持つ.
SACSIS2006最優秀論文賞.情報処理学会平成18年度論文賞.IPA未踏ソフトウェア創造事業スーパークリエータ認定.日本ソフトウェア科学会,IEEE--CS,ACM各会員.

[推薦理由]
本研究は、ネットワークオーバレイのアルゴリズム研究基盤として、オーバレイ構築ツールキットOverlay Weaver を開発した。本基盤では、少ないコード量で構造化オーバレイのアルゴリズムを実装でき、アルゴリズムの差し替え、計算機1台上で数千ノード規模のエミュレーションが可能である。これらの研究内容は、オーバーレイネットワーク、P2Pの分野で我が国をリードしている。同氏が開発したツールキットOverlay Weaverは広く一般に公開され、極めて有用性の高い研究となっている。特に、完成度の高いツールを実際に実装し、論文には多くの評価結果が提示されており、論文の完成度も高い。以上の理由から同氏の研究は、本賞を受賞するに相応しいと判断する。
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●メモリアクセスおよびリソース共有を行うカスタム命令自動生成手法
[2006-SLDM-125(2006. 5.11)] (システムLSI設計技術研究会)

瀬戸 謙修 君 (正会員)

1997年3月 東京大学工学部電気工学科卒業。
1999年3月 東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻修士課程修了。
2004年3月 東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了。
2004年4月~2007年3月 東京大学産学官連携研究員。
2007年4月より、武蔵工業大学工学部電気電子工学科講師。

[推薦理由]
本論文では,RISCベースのコンフィギュラブルプロセッサ向けの,命令セット自動拡張手法を提案している.(1)アーキテクチャの修正無しで入出力制約を越える部分グラフを実行する方法,(2)カスタム命令とメモリアクセス命令の並列実行,(3) カスタム命令間でのリソース共有という3つの手法を組み合わせて用いる.評価実験を行った結果,カスタム命令とメモリアクセス命令の並列実行により,最大26%性能が向上し,リソース共有を行うことで性能を犠牲にせずカスタム命令に必要な面積が平均で80%削減されることを示している.実用的に有用な手法の提案であることを高く評価し,本研究賞に推薦する.
 
●高速モードと低消費電力モードを有する2線式論理回路の設計手法
[2006-SLDM-127(2006.11.28)] (システムLSI設計技術研究会)

森本 薫夫 君 (正会員)

2001年3月 神戸大学 工学部 情報知能工学科 卒業
2003年3月 神戸大学大学院 自然科学研究科 情報知能工学専攻 修士課程修了
2007年3月 神戸大学大学院 自然科学研究科 情報メディア科学専攻 博士課程修了
同年4月 株式会社ルネサステクノロジ 入社

[推薦理由]
ASDMDL (Asymmetric Slope Dual Mode Diflerential Logic) は高速ダイナミック回路とスタティックCMOSの2つの動作が可能な2線論理回路方式である.動作を切り替えることで,設計した回路の動作条件に合った性能を引き出すことができる.クリティカルパス部を中心に ASDMDL を適用したASDMDL/CMOS混在プロセッサの最高動作周波数は232MHzであり,完全CMOS 設計のプロセッサと比較して14%の高速化を実現できることを,0.18umCMOS プロセスによるテストチップで実証している.実用的に有用な提案および実証を行っていることを高く評価し,本研究賞に推薦する.

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●新しいマルチレベル型反復解法:陰的マルチグリッド法の概念
[2006-HPC-107(2006. 8. 1)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
 

岩下 武史 君 (正会員)

1998年京都大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程修了.
京都大学リサーチアソシエイト(日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業),同大学助手を経て,2003年より同大学学術情報メディアセンター助教授(2007年職名変更により同准教授),現在に至る.
高性能計算,線形反復法,電磁界解析に関する研究に従事.
京都大学博士(工 学).IEEE,SIAM,情報処理学会,電気学会,日本AEM学会,日本計算工学会各会員.

[推薦理由]
陰的マルチグリッド法は、従来のマルチグリッド法における各レベルの方程式を一つの大きな統合化された方程式にまとめる方法である。著者らは、この方法により前処理手法の適用の柔軟性が増すことが期待されることを指摘し、実際に数値実験をおこなった。2次元差分解析を対象とした数値実験の結果、統合化された方程式は元の方程式と比べて、条件数、固有値分布が改善されていることを具体的に示した。論文中でのこの手法の有効性には説得力があり、さらに具体的な性能向上という点でも未来を期待させるような論文である。したがって、本賞に強く推薦する。
 
●ヘテロなOSの計算資源を活用するグリッドRPCの設計
[2006-HPC-107(2006. 8. 2)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

上村 佳史 君 (学生会員)

平成18年筑波大学第三学群情報学類卒業
同年同大学大学院博士前期課程に進学

[推薦理由]
本論文では、PCクラスタを用いた従来のP2Pシステムの多くがOSとしてLinuxのみを想定していたのに対し、ワーカ側にWindows OSを利用可能とし、その上でLinux上のプログラムがバイナリ互換で動作する環境を提供している。P2Pコンピューティングでは、ワーカとなるリソースをいかに簡便に提供可能にするかが非常に重要で、彼らの手法は個人・研究室等のレベルで参加可能なボランティアコンピューティングを推進する上で非常に画期的なプラットフォームを提供している。高性能分散コンピューティングの新たな枠組みを提供する意味で重要な研究であり、本賞受賞に十分値する研究発表であると考え、ここに推薦する。
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●並行プログラミング言語へのチャネル使用法宣言の導入
[(2007. 1.19)] (プログラミング研究会)

須藤  崇 君 (学生会員)

2006年 東北大学工学部 電気情報・物理工学科卒業。
東北大学大学院情報科学研究科博士前期課程所属。
プログラムの静的検証に興味を持つ。

[推薦理由]
本論文では,並行プログラムが正しく動作するかを,プログラマが宣言した通信チャンネルの使用法に従って検査する方法を提案している.チャンネルの使用方法の表現力が従来よりも高くなっており(正規言語から決定性ペトリネット言語に拡張されている),その判定アルゴリズムをペトリネットの到達可能性問題に帰着されるなど,十分な新規性がある.また,この型検査アルゴリズムを並行プログラミング言語Pictに試験的に実装するなど,今後実際の並行プログラムの検証への適用が期待できる.理論的にも実用的にも興味深く,山下記念研究賞に値する論文である.
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●最小コスト木状被覆問題の2倍近似アルゴリズム
[2006-AL-107(2006. 7. 3] (アルゴリズム研究会)

藤戸 敏弘 君 (正会員)

昭56 京都大学工学部精密工学科卒. 昭58 同大学大学院修士課程修了.
平6 ペンシルベニア州立大学大学院博士課程修了.同年 広島大学工学部助手.
平11 名古屋大学大学院工学研究科講師.
平12 同大学大学院工学研究科助教授.
平15 同大学大学院情報科学研究科助教授.
平16 豊橋技術科学大学工学部教授.
近似アルゴリズム, 離散最適化の研究に従事.

[推薦理由]
辺コストをもつ連結グラフ Gにおいて,その頂点集合が Gの頂点被覆を成す木を木状被覆と呼び,コスト最小の木状被覆を計算する問題を木状被覆問題という.本研究は,NP困難であるこの問題に対し,高速な 2倍近似アルゴリズムを与えるものである.なお,木状被覆問題は点被覆問題を含む問題であり,提案手法は,点被覆問題に対する 2倍近似アルゴリズムの拡張となっている.点被覆問題に対しては,近似比 2未満の近似アルゴリズムは知られておらず,本研究の結果は現時点で最良のものであり,重要な成果であると言える.アルゴリズムの解析も大変興味深く,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する。
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●特徴ベクトルに基づく木状の化学分子の列挙アルゴリズム
[2006-MPS-62(2006.12.22) ] (数理モデル化と問題解決研究会)

藤原 大樹 君 (正会員)

2001年 大阪府立大学 工学部 情報工学科 入学
2005年 大阪府立大学 工学部 情報工学科 卒業
2005年 京都大学大学院 情報学研究科 数理工学専攻 入学
2007年 京都大学大学院 情報学研究科 数理工学専攻 修了
2007年6月 三菱電機(株)  鎌倉製作所 情報システム部 配属

[推薦理由]
ある特徴の出現頻度に基づく特徴ベクトルが与えられたとき,これと同じ特徴ベクトルを有する木構造の化学グラフを全列挙するアルゴリズムを提唱している.これは創薬などにおける基本的に重要な課題であり,これに対して有用な結果を示している.
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●携帯電話組み込み用"モバイルFeliCa IC チップ"開発におけるモデル検証手法の導入と課題
[組込みシステムシンポジウム2006(2006.10.20) ] (組込みシステム研究会)

中津川泰正 君 (正会員)

平成15年上智大学大学院理工学研究科電気・電子工学専攻修士課程修了.
同年ソニー株式会社入社.平成16年よりフェリカネットワークス株式会社に勤務.
現在モバイル FeliCa IC チップのファームウェア開発に従事.

[推薦理由]
高い信頼性が求められる組込みシステム向けに注目されているモデル検査の手法を,外部仕様・設計仕様の評価を目的として,モバイルFeliCa ICチップのファームウェアの開発に適用し,実システム開発におけるモデル検査手法の有用性を確認した。本論文では,モデル検査導入の目的と導入ステップ,実施した検証内容とその結果について報告し,有用であったとの結論を得ている。また,導入にあたっての問題点と課題,今後の展望についても述べており,モデル検査手法の広範な実用化に向けて,有用性の高い論文である。
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情報環境領域

●教育環境における仮想大規模ストレージのためのツールキット
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(2006.12. 1)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)

上原  稔 君 (正会員)

昭62慶大・理工・電気卒。
平5同大大学院博士課程単位取得退学。同年東洋大学工学部情報工学科講師。
平7(慶大大学院博士課程計算機科学専攻)博士(工学)。
現在、東洋大学工学部情報工学科教授。
分散計算、情報検索、プログラミング言語などに興味をもつ。
ACM, IEEE, 情報処理学会各会員。

[推薦理由]
本論文は、数百台のIAマシンの空き領域を仮想ストレージとして連携し、PB(ペタバイト)級の分散ストレージとして利用可能とする技術に関し、教育環境を題材にツールキットを提案、学部生7000人で利用できる60TBの仮想ストレージを実装、性能・経済性を評価した結果を示した論文である。具体的には、NBD(NetworkBlockDevice)とRAIDの長所を活かし、OSの制限に縛られることなく高信頼なストレージを安価に構築する技術を提示している。今後経済化が著しいIAマシンを活用し、大規模なシステムを構築する技術は、事例に示されるような情報システムの経済的構築に不可欠なものである。そのフィージビリティを明示した本論文の実践的意義は評価に値するものであり、本論文を山下記念研究賞に推薦する。
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●A Distributed Worm Detection Method based on ACTM
[2007-DPS-130(2007. 3. 1)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)

重野  寛 君 (正会員)

1990年慶應義塾大学理工学部計測工学科卒業.
1997年慶應義塾大学大学大学院理工学研究科博士課程修了.博士(工学).
1998年慶應義塾大学理工学部情報工学科助手(有期).
2003年慶應義塾大学理工学部情報工学科助教授.
2003年加New Media Innovation Centre訪問研究員.2004年加ビクトリア大学訪問研究員.
現在,慶應義塾大学理工学部准教授.
ネットワークプロトコル,モバイルコンピューティング,ネットワークセキュリティ等の研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.

[推薦理由]
本論文は、ヒットリストによるワームであるサイレントワームを検出するための分散型のネットワーク型ワーム検出手法 d-ATCM を提案している.この研究においては,ワームの感染活動を感染リストと感染コネクションにより構成されるツリー構造を検出することでワームの存在を検出する手法を提案している.これにより,サイレントワーム検出を集中管理することなく,高い精度で行なえることをシミュレーションにより確認している. 分散型アルゴリズムを用いて,集中型と同等のワーム検出精度を実現可能であることを示し,ネットワークセキュリティの課題に対して分散処理技術の適用の方向性を示した意義は大きく,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●没入型三次元風覚ディスプレイの開発と評価
[インタラクション2007(2007. 3. 15)] (ヒューマンインタフェース研究会)

小坂 崇之 君 (正会員)

平成17年3月 金沢工業大学 工学部情報工学科卒
平成15年3月 金沢工業大学 工学研究科情報工学専攻修士課程修了
平成15年4月 金沢工業大学 情報処理サービスセンタ 助手
平成19年3月 金沢工業大学 工学研究科情報工学専攻博士課程単位取得
平成19年4月 金沢工業高等専門学校 国際コミュニケーション情報工学科 講師

 

[推薦理由]
「風覚:風による知覚」というこれまであまり明らかにされてきていない人間の属性を探るための,実験デザインと結果およびその応用を考察するもので,新規性,有用性および将来性ともに高く評価できる.人間の風覚(人間が風が来たことを知覚する能力)に対する空間方位的な認知特性を,実験設備の実装,及び綿密な実験により明らかにしており,基礎的研究成果として極めて有益であると考える.さらに,風を情報提示の手段とする研究開発に役立つシステムも示している.風を情報提示とする提案は幾つも見られるが,それらとは一線を画する極めて完成度の高い研究である.

 

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●インタラクティブだまし絵表現の提案と実装
[2006-CG-125(2006.11.16)] (グラフィクスとCAD研究会)

藤木  淳 君 (正会員)

平成12年3月 九州芸術工科大学芸術工学部工業設計学科卒業
平成12年4月 九州芸術工科大学大学院芸術工学研究科生活環境専攻修士課程前期課程入学
平成14年3月 九州芸術工科大学大学院芸術工学研究科生活環境専攻修士課程前期課程修了
平成14年5月 エクスツールス株式会社
平成15年5月 株式会社ユニゾン・システム
平成16年4月 九州大学大学院芸術工学府芸術工学専攻博士課程後期入学
平成19年3月 九州大学大学院芸術工学府芸術工学専攻博士課程後期修了 博士(芸術工学)
平成19年4月 九州産業大学非常勤講師
平成19年4月 近畿大学非常勤講師
平成19年5月 九州大学大学院芸術工学研究院非常勤臨時学術研究員

[推薦理由]
本研究発表は、対話的なCGとキャラクタアニメーションの技術を利用して、実世界では起こりえない事象を視覚的に体現させる「だまし絵」を構築する方法論に関して述べられており、人間の主観的な空間認知に基づくキャラクタの行動規則を独自に導入して対話的なシステムを構築している。その斬新な発想力とデザイン力は、本研究会の技術分野における新たな可能性を開拓するものとして高く評価できる。また、CGアートとしても既に高い評価を得ており、発表内容も本研究賞を授与するに相応しい優れたものであった。以上の理由により、本研究会は上記の研究発表を山下記念研究賞に推薦する。
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●GPUを用いたリアルタイム剛体シミュレーション
[2007-CG-126(2007. 2.20] (グラフィクスとCAD研究会)
 

原田 隆宏 君 (正会員)

平成18年東京大学工学系研究科システム量子工学専攻修士 課程修了,
同年東京大学大学院情報学環助手.
平成19年4 月助教着任.計算力学及びコンピュータグラフィックスの研究に従事.

[推薦理由]
本研究発表は、剛体形状を球の集合体として近似的に扱い衝突現象のシミュレーション計算を並列化することにより、Graphics Processing Unit(以後、GPU)の計算機構に組み込む手法を提案しており、GPUの新たな応用を開拓するものとして新規性と実用性が共に高く評価された。特に、複雑な形状を有する1万個を超える剛体の衝突シミュレーションを実時間で計算するシステムは当該分野における技術的なブレークスルーをもたらすものであり、GPUの応用分野の発展に対して多大な貢献が期待できると判断した。以上の理由により、本研究会は上記の研究発表を山下記念研究賞に推薦する。
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●類語関係抽出タスクにおけるコーパス規模拡大の影響
[2006-FI-84(2006. 9.13)] (情報学基礎研究会)

相澤 彰子 君 (正会員)

1985年東京大学工学部電子工学科卒業.
1990年東京大学大学院電気工学専攻博士課程修了.工学博士.
1990年から1992年,イリノイ大学アーバナ・シャンペイン校客員研究員.
現在,国立情報学研究所教授,総合研究大学院大学情報学専攻教授併任.
テキストメディアと情報検索,遺伝的アルゴリズム等の研究に従事.

[推薦理由]
本研究は,タグの付与されていないテキストから類語関係を自動抽出する場合に,コーパスの規模が類似度計算にどのような影響を与えているかを,実際のデータに基づいて,実証的に調査しています。類似度の計算は,情報検索や文書クラスタリングなどにおいても重要であり,その計算とコーパスの規模との関係を調べた本研究は,貴重な知見を我々にもたらしていると評価できます。また,本研究では,コーパスの規模が大きくなるにつれて,類似度の値に対する語の出現頻度の影響が無視できない場合があることを明らかにし,これを回避するためのフィルタリング法の提案も行っています。この点でも,たいへん興味深い論文であると考えることができます.
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●ガウス性信号の高能率Golomb符号化方式
[2006-AVM-55(2006.12.15)] (オーディオビジュアル複合情報処理研究会)

高村 誠之 君 (正会員)

1991年 東京大学工学部 電子工学科卒業.1996年 東京大学大学院 工学系研究科 電子工学専攻 博士課程修了.
同年,日本電信電話(株)入社.以来,画像・映像の高能率圧縮符号化アルゴリズムの研究開発,MPEG国際標準化活動などに従事.現在,日本電信電話(株)NTTサイバースペース研究所 画像メディア通信プロジェクト 映像符号化技術グループ主任研究員.
2005年~2006年スタンフォード大学客員研究員.
2001年画像電子学会 研究奨励賞,2002年映像情報メディア学会 丹羽高柳賞論文賞,2002年および2003年画像符号化シンポジウム(PCSJ)ベストポスター賞,2004年電気通信普及財団 テレコムシステム技術賞,2004年PCSJフロンティア賞,2005年情報処理学会 長尾真記念特別賞 各受賞.
2006年より, IEEE Trans. CSVT Associate Editor.
電子情報通信学会,映像情報メディア学会,画像電子学会 各会員.IEEEシニア会員.博士(工学).

[推薦理由]
情報理論において重要かつ広範な工学的現場で観測されるガウス性信号は、従来Golomb符号等の符号表不要かつ処理が簡便な符号では効率的符号化ができないとされていた。本研究では、単純で実用的な手法によりこれを指数性に可逆分布変換し、その後Golomb符号化することでHuffman符号に匹敵する符号化効率が得られることを、理論・実際の両データについて実験から明らかとした。ガウス性信号の高能率簡易符号化を可能ならしめた点と同時に、信号分散からの最適Golombパラメータの推定とその定量的効率評価を行っている点も評価でき、本研究の有用性は著しく高いと認められ、山下記念賞に推薦する。
[ 戻る ]
●Webサイトからの企業名抽出によるフィッシング対策手法の提案
[2006-GN-61(2006. 9.14)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)

柴田 賢介 君 (正会員)

平成13年 九州大学工学部電気情報工学科卒業.
平成15年 同大大学院システム情報科学府 情報工学専攻 修士課程修了.
同年 日本電信電話株式会社 NTT情報流通プラットフォーム研究所に入所.以来,情報セキュリティの研究に従事.
平成17年 グループウェアとネットワークサービスワークショップ2005ベストプレゼンテーション賞受賞.
平成18年マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2006)シンポジウム ヤングリサーチャ賞受賞.
平成18年第61回GN研究会優秀発表賞受賞.

[推薦理由]
本研究は,Webページが騙る企業名を抽出し,この企業名に対応する正当なURLのリストを用いてフィッシングサイトを検知するフィッシング対策手法を提案している.従来,目視によるURL確認や,SSL証明書の確認といった利用者に依存するフィッシング対策の課題は指摘されているが,提案手法では,利用者がシステムから提示された企業名を選択するのみでその企業を騙るフィッシングサイトを検知・警告できるという点に特徴がある.本研究の成果は今後のネットワークサービスの安全性向上への貢献が期待されることから,山下記念研究賞に推薦する.
 
●反響特性分析に基づいたBlog記事マイニング
[GNワークショップ(2006.11.16)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
 

宮田 章裕 君 (正会員)

2005年 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了
2005年-現在 日本電信電話株式会社サイバーソリューション研究所在職
2006年-現在 慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程在学

Webマイニング、グループウェア、ヒューマンインタラクション関連の研究に従事。DICOMO2004最優秀プレゼンテーション賞、GNワークショップ2006ベストペーパー賞、CollabTech2007 Best Paper Award受賞。情報処理学会会員。

[推薦理由]
本論文は、Blog記事分析において、記事に対する閲覧者の行動情報を利用する手法を提案している。提案手法では、閲覧者が記事に付与したコメント・トラックバックを分析し、記事が持つ影響力を「反響の広さ・強さ・速さ・長さ」という直感的な指標で把握する事が可能である。これにより、記事を実際に読んだ人間がどのように感じているかという観点から記事を評価する事ができ、既存手法に多く見られる言語解析による記事評価手法との比較検証実験においても優位性を示している。提案手法を用いれば、「幅広い反響を集めている」・「長期間反響を呼んでいる」等の有用な情報を提示するBlog記事検索サービスが実現でき、実用性の面においても高く評価できる。以上のように本研究は優れた成果を示しており、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する。
[ 戻る ]
●ネットワークエミュレータによる大規模DHT性能評価手法の提案
[分散システム/インターネット運用技術シンポジウム2006(2006.11.24)] (分散システム/インターネット運用技術研究会)

加藤 大志 君 (正会員)

1999.3 東京工業大学大学院 情報理工学研究科 計算工学専攻 修了
1999.4 日本電気株式会社 入社
CRM, Webサービス, P2Pネットワークに関する研究に従事

[推薦理由]
本研究発表は近年注目を浴びているDHT(Distributed Hash Table) の評価を行うためのネットワークエミューレーション環境について述べたものである。従来DHTの研究の多くでは、コンピュータシミュレーションで評価がおこなわれていたのに対して、このエミュレーション環境を使うことにより、より精密な評価が行えるようになる。この発表は提案だけでなく、実装し評価したことまで述べており、DHT の研究者のみならず、分散システム一般の研究者に興味深いものであり、有益な情報を提供している。
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●Wikipediaマイニングによる信頼性情報を考慮した記事関係の抽出
[2006-DD-58(2006.12. 1)] (デジタルドキュメント研究会)

中山浩太郎 君 (正会員)

2001年関西大学総合情報学部卒業.2003年同大学院総合情報学研究科修士課程修了.この間(株)関西総合情報研究所代表取締役,同志社女子大学非常勤講師に就任.2004年関西大学大学院を中退後,大阪大学大学院情報科学研究科にて博士号を取得し,2007年4月から大阪大学大学院情報科学研究科特任研究員となり,現在に至る.人工知能およびWWWからの知識獲得に関する研究に興味を持つ.IEEE,ACM,情報処理学会,電子情報通信学会,人工知能学会の各会員.

[推薦理由]
Web2.0時代を代表する参加型の百科事典である Wikipediaを対象とし,不特定多数のユーザがコンテンツを管理する環境での信頼性を課題として捕らえ,信頼性を考慮した記事解析手法を提案した論文である.Wikipediaのダイナミクスとコンテンツの信頼性の問題を分析し,各種リンク構造解析手法を適用,比較することでより信頼性の高い記事関係抽出アルゴリズムを提案し,その有効性を示している."信頼性"という新たな課題を抽出し,有効な解決策を提案しており,デジタルドキュメント研究の進歩に寄与するとともに,完成度も高く,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●Particle Filterを用いた複数無線LAN基地局の位置推定手法
[2006-MBL-39(2006.11.16)] (モバイルコンピューティング とユビキタス通信研究会)

鈴木 啓之 君 (学生会員)

2006年名古屋大学工学部情報工学科卒業.名古屋大学大学院情報科学研究科修士課程専攻中.第39回モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会にて優秀論文賞受賞.無線LANを用いた位置情報に関する研究を行う.

 

[推薦理由]
本論文は,屋内環境における複数の無線LAN基地局の位置を推定する手法を提案している.本手法は,タイヤに光センサを取り付けた自走機と無線LAN基地局からの電波強度を測定する指向性アンテナを組み合わせ,GPSを用いる手法では不可能であった屋内環境での基地局位置推定を実現しようとするものである.本論文では,実装および実験によって,光センサを用いた自走機の移動距離精度,および基地局の推定位置誤差が評価されており,提案手法の有用性が示されている.このように,本論文は今後の無線基地局の位置推定品質向上に貢献する優れた論文であり,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
 
●片方向リンクを考慮したアドホックネットワークルーティングプロトコルの提案と検討
[2007-MBL-40(2007. 2.23)](モバイルコンピューティング とユビキタス通信研究会)

福井 裕介 君 (学生会員)

1983年生.2006年静岡大学情報学部情報科学科卒業.
現在,同大学大学院情報学研究科修士過程在学中.
モバイルコンピューティング,アドホックネットワークにおけるルーティング
およびメディアアクセス制御に関する研究に従事.

[推薦理由]
本論文は,各端末の無線信号到達範囲が不均一な環境下でおこる片方向リンクによる問題を解決するためのルーティング方式を提案している.提案方式は,早期に双方向リンクのみのルートを構築し,同時に片方向リンクによる隠れ端末からの干渉を避けるルートを構築する.これによりネットワーク層,MAC層両層で生じる片方向リンクによる問題を解決し,安定したルート構築を可能とする.ルート構築遅延,スループット特性に関する定量的なシミュレーション評価より,提案方式の有効性が示されている.以上のように本研究は優れた成果を示しており,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●ゼロ知識証明を用いた非対称指紋認証
[マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2006)シンポジウム(2006. 7. 6)] (コンピュータセキュリティ研究会)
 

永井  慧 君 (学生会員)

2006年 東海大学電子情報学部情報メディア学科卒業
現在、同大学大学院工学研究科情報理工学専攻修士課程
バイオメトリクス、ネットワークセキュリティの研究に従事

[推薦理由]
指紋や静脈といった生体的な特徴を利用者認証に応用した生体認証が普及してきているが、登録された生体情報が漏洩するというリスクがある。ひとたび露見した生体情報はパスワードなどとは異なり、二度と変更や修正が出来ない機微情報である為である。この問題に対して、候補者の提案するアイデアは、秘密情報を漏らさないで検証者に正しい情報を持っていることを納得させることの出来るゼロ知識証明の技術を応用するというものである。単純なゼロ知識証明では秘密情報には1ビットの誤りも認められないので、これをそのまま生体情報に適用することは出来ない。そこで、候補者は、あいまいなパターンマッチングを実現する手法として知られているニューラルネットワークをゼロ知識証明することである。候補者の研究では、このアイデアを実装し、生体情報の特徴量を抽出する方式との親和性を評価して最適なものを明らかにし、本人拒否率と他人受け入れ率を算出して従来の生体認証方式との比較を行っている。提案方式には、クラスタリングを一部用いているがそこで安全性が落ちる可能性があり、まだまだ既存の指紋認証と比べて誤認識率が高いなどの精度の面など、多くの改善が必要ではあるが、ゼロ知識証明と生体認証という従来全く異なる分野で研究が進められてきた技術を結びつけるという研究の意義は大きから、本論文を推薦する。
 
●Javaを利用した携帯電話上でのTateペアリングの高速実装
[コンピュータセキュリティシンポジウム2006(2006.10.27)] (コンピュータセキュリティ研究会)

川原 祐人 君 (学生会員)

平成19年3月 公立はこだて未来大学システム情報科学部 卒業.
現在,同大学大学院システム情報科学研究科 博士(前期)課程 在学中.

[推薦理由]
次世代の暗号技術として注目を集めているペアリング暗号を、携帯電話上にてJavaを用いてソフトウェア実装した初めての報告である。標数3の有限体上のηTペアリングを異なる拡大次数にて実装し、特に次数97の場合に特化した高速実装を行っている。実際の製品上での計測を行った結果、高速かつ実用的な結果が得られている点が評価できる。また、現在利用されているRSA暗号や楕円曲線との実装速度の比較も行われている。これらより、十分な高速な実装結果が得られおり、実用性が高いことから、本論文を推薦する。
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●道路交通流の円滑化に向けた情報共有に基づく協調カーナビの提案
[2006-ITS-25(2006. 6.23)] (高度交通システム研究会)

山下 倫央 君 (正会員)

2000-2003年,日本学術振興会特別研究員.
2002年,北海道大学大学院工学研究科 システム情報工学専攻博士課程修了.博士(工学).
2002-2003年,ブルッキングス研究所 客員研究員.
2003年,産業技術総合研究所 サイバーアシスト研究センター 特別研究員.
2005年,産業技術総合研究所 情報技術研究部門 研究員.
ゲーム理論,社会システムシミュレーション,マルチエージェント,ユビキタスコンピューティング等に興味を持つ.

 

[推薦理由]
本論文では、高度道路交通システム(ITS)におけるカーナビゲーションシステムにおいて、各車両の経路情報から将来の混雑状況を見積り、その混在情報に基づいて各車両にて経路を再算出する手法を提案している。また、個人的誘因と社会的受容性の観点から評価を実施し、個人の移動時間の削減、全体の移動効率の向上が可能であることを実証したものである。今後、カーナビゲーションシステムの通信機能が必須となりつつあり、本提案は全体的な道路交通の効率化を考える上で有用性が高く、カーナビゲーションシステムの研究開発者、サービス提供者に極めて有益な知見を与えるものとして評価する。よって、本論文の発表者を山下記念研究賞受賞候補者に推薦する。
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●Javaプログラムへの動的な測定点設置方式の評価
[2006-EVA-19(2006.11.13)] (システム評価研究会)

堀川  隆 君 (正会員)

1959年生まれ。
1981年同志社大学工学部電子工学科卒業。
1983年京都大学大学院工学研究科修了。
同年日本電気(株)入社。以来、マイクロ・プロセッサや計算機システムのアーキテクチャ、および、計算機性能評価の方法論やツール、特に、イベント・トレースを利用した性能評価技術の研究開発に従事。
現在は、同共通基盤ソフトウェア研究所ソフトウェアアーキテクチャTG主幹研究員。

[推薦理由]
本発表は、プログラムを性能測定する際の基本技術であるプログラム内への性能点設置を、Javaプログラムのソースコードを修正することなく行い、かつ性能低下を効果的に抑える方法を提案している。そしてその提案方式を実際のプログラムに実装適用し、定常状態にある性能測定を効果的に行えることを確認した。提案方式は着眼点に優れているだけでなく、実システムの性能評価に有効な実用性を備えおり、システム評価研究会からの山下記念賞に推薦します。
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●Consensual Disclosureを実現する実用的な追跡不能アクセス制御方式
[2006-UBI-12(2006.11.10)] (ユビキタスコンピューティン グシステム研究会)

申  吉浩 君 (正会員)

東京大学理学系研究科数学専門課程にて修士(理学)、東京大学先端科学技術研究センターにて博士(工学)を取得。富士ゼロックス株式会社総合研究所、東京大学先端科学技術研究センターを経て、カーネギーメロン大学日本校専任講師(現職)。現在は、米国ピッツバーグのカーネギーメロン大学に交換研究員として滞在中。

 

[推薦理由]
セキュリティとプライバシ保護が重要事項となる本分野において有望な基盤技術研究である.ユビキタス情報社会ではユーザが携帯するデバイスと環境側に遍在するコンピュータとの協調動作により,ユーザはいつでもどこでもサービスを享受可能である反面,ネットワークに接続された膨大な数のセンサの存在は,プライバシ保護を困難にする.それを解決するために候補者らは追跡不能なアクセス制御を実現する実用的なプロトコルを提案した.ユビキタスコンピューティングの実用化を目指した研究事例として高く評価し,推薦する.
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フロンティア領域

●符号化問題として解く日本語係り受け解析
[2006-NL-176(2006.11.22)] (自然言語処理研究会)

田村 晃裕 君 (正会員)

2005年3月 東京工業大学工学部情報工学科 卒業。
2007年3月 東京工業大学大学院知能システム科学専攻 修士課程終了。
2007年4月 日本電気株式会社 入社。
現在、同社にて自然言語処理の研究に従事。

[推薦理由]
従来の係り受け解析でとらえることが難しかった構文木の子孫関係を、符号化の関係としてとらえることにより解決するモデルを提案している。 非常に独特の手法で新規性も高く、また実験により従来の手法と比較してより高い精度を達成していることから、本論文を山下賞に推薦する。
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●NAISTテキストコーパス: 述語項構造と共参照関係のアノテーション
[2007-NL-177(2007. 1.26)] (自然言語処理研究会)

飯田  龍 君 (正会員)

1980年生.
2002年九州工業大学情報工学部卒業.
2004年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了.
2007年同大学院大学情報工学研究科博士後期課程修了.
同年より奈良先端科学技術大学院大学特任助教.現在にいたる.
博士(工学).自然言語処理の研究に従事.情報処理学会会員.

[推薦理由]
自然言語処理の性能の大部分はコーパスアノテーションの性質や精度に大きく依存している。自然言語処理の基礎技術と応用技術をつなぐ重要な構造として、述語項構造や共参照関係の深い構造を大規模テキストに対しアノテートしており、その作成基準を明示するなど、今後の自然言語処理の発展に大きく寄与すると判断するため本論文を山下賞に推薦する。
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●「ロボット・ミーム」の構想 -人-ロボット間の相互適応による文化の学習・伝達・創出の実現-
[2006-ICS-146(2006.12.13)] (知能と複雑系研究会)
 

駒込 大輔 君 (学生会員)

1984 年 北海道中川郡幕別町生まれ
2003 年 北海道帯広三条高等学校卒業
2007年 公立はこだて未来大学システム情報科学部情報アーキテクチャ学科卒業
同年 同大学大学院システム情報科学研究科修士課程メディアデザイン領域進学現在に至る.
知的システムとのインタラクションに伴う人間の創造行為に関心を持つ.
情報処理学会,日本デザイン学会会員

[推薦理由]
本論文では、人間とロボットのインタラクションの設計論に、文化の伝達を担う遺伝子としてのミームの概念を適用し、両者の相互適応をとおして集合的な知能の実現を目指すという野心的な構想を提案している。本研究自体はまだ初期的な段階にあるが、現時点においても、ロボットが用いるコミュニケーションの手法が人間に伝播する過程が実験により検証されている。本論文における提案の新規性と独自性を評価し、本賞に推薦するものである。
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●特徴点の局所的配置に基づくリアルタイム文書画像検索とその拡張現実への応用
[2006-CVIM-155(2006. 9. 8)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)

中居 友弘 君 (学生会員)

2004年 大阪府立大学工学部情報工学科卒業。
2006年 大阪府立大学大学院工学研究科博士前期課程修了。
大阪府立大学大学院博士後期課程在学中。
2007年より日本学術振興会特別研究員(DC2)。
文書画像処理、画像検索の研究に従事。
平成18年度電子情報学会論文賞、FIT2005ヤングリサーチャー賞、MIRU2006デモセッション賞受賞。
情報処理学会、電子情報通信学会、IEEE各学生会員。

[推薦理由]
Webカメラで撮影された文書に対応する電子文書をデータベースからリアルタイムで検索することを目的としている。特徴点の局所的配置に基づく文書画像検索法の高速性を利用した手法が提案された。さらに,本手法が,撮影範囲や紙面の傾きを推定可能な特徴を活かし,文書の関連情報を撮影画像上に自然な形で重畳表示する拡張現実技術にも発展させている。以上より,本論文は平成19年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である。
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●近接点光源は未較正照度差ステレオにおける形状復元の不定性を解決するか?
[2007-CVIM-157(2007. 1.12)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 

岡部 孝弘 君 (正会員)

1997年東京大学理学部物理学科卒業.
1999年同大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了.
2000年同博士課程中退.
2001年より東京大学生産技術研究所技官,同助手を経て,現在同助教.
コンピュータビジョン,コンピュータグラフィックス,画像パターン認識に関する研究に従事.
平成17年度電子情報通信学会論文賞,MIRU2004優秀論文賞,平成16年度PRMU研究奨励賞などを受賞.
情報処理学会,IEEE各会員.

[推薦理由]
平行光線かつLambert物体を仮定した未校正照度差ステレオでは物体の形状を一意に決定することができない(GBR).本稿では,照度が距離の二乗に逆比例する近接点光源のもたらす非線形な現象に着目して,近接点光源下において観察される陰影が未校正照度差ステレオにおける形状の不定性を解決することを示した。具体的に形状の一意性および不定性を解決するための手法を示し,実験結果にて有効性も示された.以上より,本論文は平成19年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●デジタル教科書作成ツールの開発と市販教科書への応用
[情報教育シンポジウム2006(2006. 8.27)] (コンピュータと教育研究会)

原 久太郎 君 (正会員)

1970年:立教大学法学部卒業 大日本図書入社 営業部、広報部、編集部に所属 小学校教科書(算数)編集
1989年:大日本図書にて、教育用コンピュータ教材の開発に着手 教材開発ソフトKiT(MS-DOS版)発売 小学校算数、理科、生活科デジタル教材の開発 コンピュータ図鑑「人体編」「天気図鑑」などを開発
1994年:文部科学省教育用ソフトウェア開発事業を「缶と環境」で受託
1996年:同事業を「操作実験ネットワーク数学」で受託
1999年:子ども用共同学習支援ツール‘inote’の開発 教育システム情報学会で発表
2003年:CEC Eスクェアアドバンス e-黒板研究会委員
2003年:大日本図書を退社、NPO法人地域学習センターゆーらっぷを設立(理事長)
2004年:IT活用教材標準化委員会を組織(事務局長) 教科書、教材会社、NTT東、内田洋行、ハードメーカーなど40社が参加 「2005年からの教科指導」を提案
2005年:大日本図書、学校図書の中学校デジタル教科書を作成
2006年:IT活用教材標準化委員会を「教育におけるICT利活用研究会」に改組 会長:山西潤一富山大学教授、事務局長:原久太郎 大学研究者も会員にし、研究の幅を広げる
2007年:株式会社イーテキスト研究所を設立:代表取締役

[推薦理由]
本発表は、教科書というもっとも重要なツールの電子化を提案し、実際に発表者が作成して市販したデジタル教科書について報告している。さら  に、そのデジタル教科書の作成のために開発したツールdbook についても報告している。本研究は発表者らが実際にツールを開発し、それを用いて教科書を作成するという、「情報教育」の本流に沿った研究である。さらに、従来の手法の批判的検討からデジタル教科書に求められる要件をまず提示し、授業で用いた結果の評価も行っており、研究の完成度は高い。よって、山下記念研究賞受賞候補として推薦する。
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●3軸自律制御ロボットを用いた制御の学習
[情報教育シンポジウム2006(2006. 8.28)] (コンピュータと教育研究会)

西ヶ谷浩史 君 (準会員)

平成元年3月 東京農業大学農学部卒業
平成元年4月 藤枝市立葉梨中学校 勤務
平成7年4月 掛川市立桜が丘中学校 勤務
平成10年4月 藤枝市立青島中学校 勤務
平成18年4月 静岡大学教育学部附属島田中学校 勤務

[推薦理由]
本発表は、中学校における自律型3軸制御ロボットの制御学習を報告している。発表者らは中学校技術・家庭科の授業において、自律型2軸 制御ロボットの授業を行ってきたが、2軸ではプログラミングが単調になるなどの限界が明らかになった。そこで、新たに3軸制御ロボットを授業に取り入れた結果、生徒が独自の工夫を行える幅が広がった反面、ただ単にモーターが一つ増えただけではなく扱うセンサーの数が増え、プログラミングも複雑になるなど課題もあきらかとなった。本発表では、3軸を授業に取り入れることの効果を検証し、検討すべき課題について考察している。本発表はロボット制御学習の新しいスタイルを提案しており、効果の検証もしっかりしている。よって、山下記念研究賞受賞候補として推薦する。
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●文字オントロジーに基づく文字処理について
[2006-CH-72(2006.10.27)] (人文科学とコンピュータ研究会)

守岡 知彦 君 (正会員)

1993年 熊本大学工学部電気情報工学科卒業。
1999年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了、博士(情報科学)。
1999年 電子技術総合研究所 COE 特別研究員。
2000年より、京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター助手(現、助教)。
主に漢字情報学関連の研究と古典中国学関連の情報処理に関する技術開発に従事。

[推薦理由]
漢字文献の電子化などで問題となる,文字符号にない文字の符号化や異体字処理について,抜本的な解決のための具体的な道筋を示した研究である。文字処理についての新たなパースペクティブを切り拓くと同時に,それをきちんと継続することで,新しい方向性への基盤を着実に築いている点が評価できる。とくに以下の2点が特筆される。1) 知識表現に基づく文字処理モデルを提案するとともに,十分な表現力を持った大規模文字知識データベースの構成法を示した。2) 提案モデルに基づくシステムの実装と大規模文字知識データベースの構築を行い,提案する文字知識処理方法の有用性を実証した。
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●オブジェクト指向設計によるチベット文字認識研究の発展
[2007-CH-73(2007. 1.27)] (人文科学とコンピュータ研究会)

小島 正美 君 (正会員)

1946年生まれ. 1967年3月 東北大学工業教員養成所・電気工学科卒1967年4月 東北工業大学電子・通信工学科助手2003年4月 講師、助教授を経て情報通信工学科教授、現在に至る2001年    博士(工学)を富山大学から取得
2006年度情報処理学会代表会員情報処理学会、電子情報通信学会、日本印度学仏教学会など各会員. 主に、チベット文字認識に関する研究に従事している.

[推薦理由]
チベット文字認識システムの開発を長年継続し,チベット学研究に資する実用システムを完成させたことが高く評価される。とくに以下の2点が特筆される。1) 誤認識率の多い文字に対して,オブジェクト指向類似辞書文字を用い誤認識文字の改善を行うことで,着実な認識率改善がなされ有効であることを示したこと。2) チベット学者からの要望を受けて,GUIによる対話的なチベット文字認識システムを実現し,実際にチベット学者の実用に供していること,また,オブジェクト指向設計手法の導入が対話機能の実現に効果的であることを具体的に示したこと。
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●音楽音響信号と歌詞の時間的対応付け手法: 歌声の分離と母音のViterbiアラインメント
[2006-MUS-66(2006. 8.7)] (音楽情報科学研究会)

藤原 弘将 君 (正会員)

2005年京都大学工学部情報学科卒業.
2007年同大学大学院情報学研究科知能情報学専攻修士課程修了.
同年より産業技術総合研究所情報技術研究部門研究員.
音楽情報処理,音声情報処理に興味を持つ.
電子情報通信学会,日本音響学会各会員.

 

[推薦理由]
歌声とその歌詞は音楽において大切な要素であり、歌番組やカラオケでの歌詞表示等からもわかるように、音楽再生中に歌詞を同期表示する機能は幅広く提供されてきた。しかし、それらはすべて人間が作業したもので、その自動化は従来解決されていない重要な研究課題であった。本研究は、歌声とその伴奏音が混合した音楽音響信号とその歌詞を時間的に対応付ける技術を初めて実現したもので、その着想と問題解決、評価に至る一連の研究成果は優れている。発表者自身の独創性と魅力的な発表は、本賞に相応しいものとして高く評価できる。
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●限定されたドメインにおける質問応答機能を備えた文書検索・提示型対話システム
[2006-SLP-62(2006. 7. 8)] (音声言語情報処理研究会)

翠  輝久 君 (学生会員)

2003年 京都大学工学部情報学科卒業.
2005年 同大学院情報学研究科知能情報学専攻修士課程修了.
現在,同大学院情報学研究科知能情報学専攻博士後期課程在学中.
2005年から 日本学術振興会特別研究員(DC1).
音声対話システムの研究に従事.
電子情報通信学会,日本音響学会,言語処理学会各学生会員.

[推薦理由]
本研究は、インタラクティブに質問応答を行う音声対話エージェントに関するものである。ユーザからの断片的な検索要求や質問に対応できる ようにしただけでなく、システムからも(自動的に生成された)質問の形式で情報推薦を行うことで、対話的に情報案内が行えるようにしている。また、バックエンドとして、関係データベースのような構造化された知識でなく、(ドメインは限定されているものの) Wikipediaのような文書集合を用いており、汎用性が高い。博物館において長期間にわたって運用を行ったことも高く評価できる。なお発表者は、本システムに関して3件の発表を行っており、いずれも高い評価を得ている。
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●AdaBoostを用いたシステムへの問い合わせと雑談の判別
[2006-SLP-64(2006.12.21)] (音声言語情報処理研究会)

佐古  淳 君 (学生会員)

平成16年 龍谷大学 理工学部 電子情報学科 卒業.
平成18年 神戸大学大学院 自然科学研究科 博士課程前期課程 修了.
現在同大学院博士課程後期課程に在籍.
言語モデル,音声対話の研究に従事.
電子情報通信学会,日本音響学会,各学生員.

[推薦理由]
音声認識を用いたインタフェースを実環境で運用する際には、システムへの要求・問い合わせなどの入力発話なのか、独り言や周囲の人との雑
談なのかを識別することが重要な課題となっている。従来は認識結果の信頼度に基づく棄却が一般的であったのに対して、本研究では、AdaBoostによる機械学習を用いることで、システムへの入力でない発話・雑談に固有の表現を素性として抽出し、識別器を構成している。適合率・再現率ともに 94%の精度を実現しており、しかも識別器は汎用性を有すると考えられ、高く評価できる。
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●自動実行型ADRサービスにおける参加者の費用負担方法のあり方に 関する一考察 —電子的自力救済型個人データ保護制度を中心に—
[2006-EIP-34(2006.12. 1)] (電子化知的財産・社会基盤研究会)
  

橋本 誠志 君 (正会員)

1973年生
1996年 関西学院大学法学部卒業
1999年 同志社大学大学院総合政策科学研究科総合政策科学専攻博士課程(前期課程)修了
2003年 同志社大学大学院総合政策科学研究科総合政策科学専攻博士課程(後期課程)修了.博士(政策科学)
2003年4月同志社大学法学部嘱託講師
2005年4月徳島文理大学総合政策学部専任講師,現在に至る.
紛争処理の自動化に関する制度設計.特にネットワーク上への個人データ拡散事例に関する紛争処理手続中の被害拡散防止策の研究に従事.主著に『電子的個人データ保護の方法』(信山社,2007)
2000年3月電気通信普及財団 第15回電気通信普及財団賞(テレコム社会科学学生賞)受賞
2004年6月情報通信学会設立20周年記念懸賞論文賞受賞
2007年4月より情報処理学会電子化知的財産・社会基盤研究会(EIP)運営委員
情報処理学会,法とコンピュータ学会,情報ネットワーク法学会,日本社会学会,日本法社会学会各正会員

[推薦理由]
橋本誠志氏は、EIP研究会設立の初年度より積極的に同研究会で論考を発表しており、彼の研究成果はいわばEIPの軌跡と一致するとも言える。本推薦論文は、欧米で研究されている紛争処理の自動化について、日本法の立場からあらたに検討を加えたものであり、その先進性は高く評価できる。また法制度と情報システムの橋渡しとも言える当研究は、その学際性においても斬新さを感じさせるものである。これまでの研究成果を鑑み、研究者としての安定性を感じさせつつも、更なる飛躍を期待できることから、山下賞候補として氏を推薦する。
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●大貧民における手の構造
[2007-GI-17(2007. 3. 5)] (ゲーム情報学研究会)

西野 順二 君 (正会員)

電気通信大学システム工学科助教。
1995年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程退学。
福井大学情報工学科助手、同知能システム工学科を経て現職。
ファジィ理論を軸にシステム科学とその応用として、RoboCupサッカーシミュレーションにおける協調システムに関する研究およびゲーム情報学に関する研究に従事。
2002年 日本人工知能学会研究奨励賞、2006年 天才プログラマー。
情報処理学会、知能情報ファジィ学会会員。

[推薦理由]
受賞対象論文は,多人数ゲームである大貧民について,完全データベース構築に向けた終盤の研究を行っており,特に,二人及び三人が残った場合の終盤の一枚プレイの性質を明らかにしている.多人数ゲームに関する終盤データベースの研究はこれまでほとんど例がなく,これらの成果はゲーム情報学に新しい研究分野を拓いたと言える.よって本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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●生化学反応系のためのベイズ的システム同定法
[2006-BIO-5(2006. 6.15)] (バイオ情報学研究会)
 

吉本潤一郎 君 (正会員)

1975年生.1998年関西大学総合情報学部卒業.
2002年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.博士(工学)を取得.
科学技術振興機構CREST研究員,奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科非常勤講師などを経て,
2005年より(独)沖縄科学技術研究基盤整備機構・大学院大学先行事業研究員.
2006年より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科客員准教授を兼務.

[推薦理由]
生命の諸現象をシステムとしての包括的な理解を目指すシステム生物学において、各条件で対象とするシステムがどのような動的応答を示すかを同定するシステム同定問題はその後のシステム解析の妥当性を裏付ける上で重要な問題である。本研究では、この問題に対してベイズ推定法に基づく新たなアプローチが提案されており、特に、パラメータの推定、ノイズレベルの推定、パラメータの信頼区間、パラメータ間の相関関係の可視化を統一的に扱える理論体系を提案したという点で学術的貢献があった。また、今後の反応構造推定まで含めたより高次のシステム同定に対しても新たな理論的基盤を与えるものであると期待される成果である。よって本研究を研究賞候補として推薦する。
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