2010年度詳細

2010年度(平成22年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,これまでは研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に 贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は34研究会の主査から推薦された計53編の優れた論文に対し,慎重 な審議を行い,決定されたうえで,理事会(平成22年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の受賞者は下記53君で,3月3日に東京工業大学で開催される第73回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI CG IS FI AVM GN DD MBL CSEC ITS EVA UBI IOT

<フロンティア領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP(該当なし) GI EC  BIO

コンピュータサイエンス領域

●Web検索を用いた関連のある概念間の関係抽出手法
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム( DEIM2010 )(H22.2. 28)] (データベースシステム研究会)

白川 真澄  君 (学生会員)

2008年大阪大学工学部電子情報エネルギー工学科卒業. 2010年同大学院情報科学研究科博士前期課程修了.同年同大学院情報科学研究科博士後期課程進学. WWWからの知識獲得,自然言語処理に関する研究に従事.日本データベース学会の学生会員.
[推薦理由] 本発表では,Wikipediaから抽出した情報とWeb検索によって得られる情報を統合することで,固有名詞および専門用語の網羅性と概念間の関係の多様性を考慮した,大規模オントロジを自動構築する新たな手法を提案している.とくに,情報検索分野で広く用いられる評価指標を複数使用して定量的評価を行うとともに,成功例と失敗例をもとに示唆に富む議論を展開している点が評価に値する.また,提案手法は対象分野を限定しないため,今後の当該研究分野の発展ならびにソーシャルメディアサービス等の進歩に寄与することが期待される.これらの理由から,本発表は山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●モデルに基づく誤り特定と反例修正候補の提示
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2009(H21. 9. 8)] (ソフトウェア工学研究会)

熊澤  努  君 (学生会員)

2001年東京都立大学 工学部 電子・情報工学科卒業.
同年 株式会社アドバンテスト入社.
2005年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系修士課程入学.
2007年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系修士課程修了.
同年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系博士課程進学.
現在に至る.
情報処理学会会員.

[推薦理由] 本論文では,既存のモデル検査器における課題に着目し,それに対する改善手法を提案している.対象モデルが性質を満たさない場合,従来のモデル検査器では反例を提示するのみであり,結局のところモデルの修正では開発者が手作業で誤り箇所の特定と修正候補の創出を行う必要があった.この課題に対し,本論文では反例を用いて誤り修正箇所及び修正候補の発見を可能とする手法を提案し,実装と事例研究を行っている.近年,ソフトウェア工学分野において形式手法に対する注目度は高く,本論文の取り組みは極めて興味深いものであり,その学術的価値は高い.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●CX-Checker: C言語プログラムのためのカスタマイズ可能なコーディングチェッカ
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2009(H21. 9. 8)] (ソフトウェア工学研究会)

大須賀俊憲  君 (正会員)

2006年 名古屋大学工学部電気電子・情報工学科卒. 2008年 名古屋大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了.同年 日本電気株式会社入社. 2009年 ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2009学生奨励賞受賞.情報処理学会会員

 

[推薦理由] 本論文では,組込みソフトウェアの保守性及び再利用性の向上を目的として,カスタマイズ性の高いコーディングチェッカを開発している.今日,組込みソフトウェア業界では MISRA-C に代表されるようにコーディング規約に基づいた品質向上・保証活動が盛んに行われており,その中でコーディングチェッカの役割並びに産業界からの期待度は極めて高い.本論文では既存のコーディングチェッカにおけるカスタマイズ性の弱さに着目し,その課題に対して三つのルールによる柔軟な対応策を講じている.本論文の取り組みは極めて興味深く実用性も高い.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●3次元DRAM-プロセッサ積層実装を対象としたオンチップ・メモリ・アーキテクチャの提案と評価
[2009-ARC-183(H21. 4.22)] (計算機アーキテクチャ研究会)

橋口 慎哉  君 (学生会員)

2005年4月 九州大学 工学部 電気情報工学科入学
2009年3月 九州大学 工学部 電気情報工学科卒業
2009年4月 九州大学大学院 システム情報科学府 情報知能工学専攻入学

[推薦理由] 本研究は3次元積層LSIといった新しい半導体実装技術を前提とし,メモリシステムの高性能化を実現する新しいアーキテクチャを提案している.候補者は,プロセッサと大容量DRAMの積層は大きな性能向上を実現する潜在能力を有する反面,アプリケーション・プログラムの特性によっては逆に性能が低下することを明らかにした.また,この問題を解決する手段として,3次元積層されたSRAMとDRAMから成る適応型キャッシュメモリ・アーキテクチャを提案し,その有効性を明らかにしている.このように,本研究は半導体実装技術とアーキテクチャ技術の融合に基づく新しい試みであり,先見性,新規性,有効性のいずれも高く評価できる.以上より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●追い出しラインに着目したプリフェッチスロットリング手法
[2009-ARC-184(H21. 8. 5)] (計算機アーキテクチャ研究会)

入江 英嗣  君 (正会員)

1999年東京大学工学部電子情報工学科卒業. 2004年年同大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程修了.博士(情報理工学). 2004年科学技術振興機構CREST研究員. 2008年東京大学情報理工学系研究科助教. 2010年電気通信大学情報システム学研究科准教授.プロセッサ・アーキテクチャ,コンピュータ・システム等の研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.

 

[推薦理由] 盛んに研究が行われ,近年実装の進んでいるプリフェッチ技術について,その適用量を制御する研究である.プリフェッチ技術は,現行プロセッサの性能改善に有効であるが,プログラムによっては性能を悪化させる副作用があるため,このことが積極的な採用の妨げとなっている.本研究では,動的にプリフェッチ量を変化させて最適な性能を保つための制御機構が提案,評価されている.関連する最新の研究では,アドレス予測の精度などに着目したフィードバック制御が行われているが,本研究では独自のアプローチとして,キャッシュから追い出されるラインの状態に着目し,このことによってロバストかつ省資源の制御を実現おり,アイデアの独自性,研究の有用性,いずれも高く評価できる.以上より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●テラスケールコンピューティングのための遠隔スワップシステムTeramem
[先進的計算基盤システムシンポジウム(H21. 5. 29)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

山本 和典 君 (正会員)

2008年 東京大学 理学部 情報科学科 卒業 2010年 東京大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 修士課程修了同年 ソニー株式会社 入社

 

[推薦理由] 本論文は大規模仮想メモリのスワップ領域として遠隔のクラスタシステム上に分散したメモリを利用する方式を提案し,既存のOSのメモリ管理に実装し評価を行っている.カーネルレベルで実装することで,カーネルの情報を利用した効率的な遠隔スワップを行うことが可能となっており,ユーザプログラムをほとんど変更することなく,大容量仮想メモリを提供する遠隔スワップシステムの実行性能を向上できることを実証している.OS標準のスワップ機構では十分な性能が得られないことを示した上で独自のスワップ方式を提案しており,わかりやすい論理展開と提案の新規性が高く評価できると同時に実験による信頼性も高い.研究の今後の発展も期待でき,授賞に十分な内容を有している.
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●Kemari: 仮想マシン間の同期による耐故障クラスタリング
[コンピュータシステム・シンポジウム2009(H21.11.26)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

田村 芳明  君 (正会員)

2003 年上智大学理工学部機械工学科卒業.
2005 年米国Northeastern UniversityよりM.S.(Computer Systems Engineering).
同年日本電信電話株式会社入社.以来,オペレーティングシステム,仮想化技術の研究に従事.
現在,NTT サイバースペース研究所に所属.

[推薦理由] 本論文は,複数の仮想機械間の同期による耐故障クラスタリングとして,複数の仮想機械間の同期,ハードウェア障害の通知,障害発生後の切替えについて検討し,障害発生時においてもサービスを継続する手法を提案,実機に実装し,性能を評価している.仮想機械間の同期については,バックアップとなる仮想機械のイメージ転送のオーバヘッドを減らすためにイベントにより同期を行うと同時にイメージの差分転送を行っている. 故障性を考慮したクラスタリングを仮想マシンを用いて実現する方式は,システム構築のテーマ今後重要であり,本方式は有効性が高いと考えられる.また,技術的に興味深いソフトウェアが高い品質で実装され,ネットワーク上に公開されていることは,企業の研究開発として高く評価できる.

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●Increasing Yield Using Partially-Programmable Circuits
[2009-SLDM-142(H21.12. 4)] (システムLSI設計技術研究会)

山下  茂  君 (正会員)

1993年 京都大学工学部情報工学科卒業 1995年 京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修了 1995年 NTTコミュニケーション科学基礎研究所研究員 2000年 科学技術振興事業団今井量子計算機構プロジェクト研究員(兼務) 2001年 京都大学博士 (情報学) 2003年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授 2009年 立命館大学情報理工学部情報システム学科教授
[推薦理由]集積回路の微細化に伴い,欠陥に強い回路が求められている.冗長化やFPGAの利用などによる欠陥の回避は有効だが,面積や性能の面で,オーバーヘッドが大きいという問題点がある.本論文は,面積・性能オーバーヘッドを最小限に抑えながら,集積回路の製造歩留まりを向上する方法を提案している.提案手法は,回路の一部をプログラム可能にし,回路中の結線に故障が発生した場合にも,プログラムを変更することで,回路を正常動作させることを可能とした.実例を使用した評価実験から,提案手法により欠陥を回避できることが確認できた.手法の有効性・独創性ともに高く評価できる.以上の理由により本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●並列ブランチング・プログラム・マシンを用いたパケット分類器について
[2010-SLDM-143(H22. 1.27)] (システムLSI設計技術研究会)

中原 啓貴  君 (正会員)

2003年3月 九州工業大学電子情報工学部 卒業 2005年3月 九州工業大学情報創生工学研究科 修士課程 修了 2007年9月 九州工業大学情報創生工学研究科 博士課程 修了(情報工学)同年 同大学,産学官連携研究員現在に至る
[推薦理由]本論文は,パケット分類を並列に高速処理可能なハードウェアの設計手法を提案している.パケット分類処理は,ルータをはじめとするネットワーク処理実現に必須の機能であり,汎用プロセッサでは性能が不足する問題点がある.提案手法では,パケット分類表を複数個に分割し,四分決定木でコンパクトに表現したものを,2種類の命令を持つシンプルな専用プロセッサ上で効率的に並列実行することを可能にした.32並列の専用プロセッサをFPGAに実装し,汎用プロセッサと比べて,8.1倍以上の高速化,9.7分の1以下のメモリ使用量削減を確認している.実用的に有用な提案,および実証を行っている点を高く評価し,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●アクセラレータによる四倍精度演算
[2009-HPC-121(H21. 8. 6)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

中里 直人  君 (正会員)

1972年生. 2000年東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程修了. 2001年から日本学術振興会特別研究員, 2004年から理化学研究所基礎科学特別研究員を経て, 2007年より会津大学准教授. 研究分野は, 数値シミュレーションとアクセラレータ型計算機によるHPC. IPA未踏ソフトウエアプロジェクトスーパークリエーター(2005)受賞. 理学博士.情報処理学会, 日本天文学会,国際天文連合各会員.

[推薦理由]本論文は,近年盛んに研究開発が行われているGPUやGRAPE-DRなどのハードウェアアクセラレータが,DD型の4倍精度浮動小数点演算の高速化にも使用できることを主張し,実用的な積分計算を用いたベンチマークテストによってその効用を証明している.大規模化する科学技術計算には,計算の高速化と計算結果の信頼性向上の両方が求められているが,著者らは市販GPUやGRAPE-DRを用いることでそれが可能であることを示した.HPCに求められる2 つの要求に的確に応えた本研究は今後の成果が大いに期待されることから,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●OpenCLによるGPUコンピューティングの性能評価
[2010-HPC-124(H22. 2.23)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

荒井 勇亮  君 (学生会員)

2006年(平成18年)3月 茨城県立下妻第一高等学校 卒業 2010年(平成22年)3月 東北大学 工学部 機械知能・航空工学科 卒業 2010年(平成22年)4月 東北大学 大学院情報科学研究科 入学

 

[推薦理由]本論文は,ヘテロジニアスな並列計算機環境に適した並列プログラミングのための フレームワークであるOpenCL によるGPGPUプログラムの最適化手法について報告している. ベンダ依存の少ないOpenCLと,NVIDIA社が提供しているGPGPU開発環境CUDAとの性能差を定量的に比較し,またOpenCLコードに対してCUDAコンパイラが自動で行っている最適化手法を足がかりに単純なコード変換を行うことで,実用的な最適化が見込みこまれるという有益な情報を示した.以上の理由により,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●自動並列化のためのElement-Sensitiveポインタ解析
[PRO-2009-3(H21.10.29) ] (プログラミング研究会)

間瀬 正啓  君 (正会員)

2005年 早稲田大学理工学部電気電子情報工学科卒業. 2007年 早稲田大学大学院理工学研究科情報・ネットワーク専攻修士課程修了. 2008年 早稲田大学基幹理工学部情報理工学科助手. 2010年 早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工学専攻博士後期課程満期退学.現在に至る.

 

[推薦理由]この研究は,C言語のようにポインタを有する手続き型プログラミング言語に対して,自動並列化を可能とするためのプログラム解析である,Element-Sensitive解析を提案している.この解析では,既存のポインタ解析手法に対して,「エレメントエイリアス」と名付けられた,1ビットのフラグをpoints-to情報に付加するという拡張を施すことにより,自動並列化に有用なポインタ解析精度を得ることができることを示した.エレメントエイリアスを推論すると,後は従来の依存解析を適用可能となるという着眼点は素晴らしい.この手法に基づく実装を行ない,性能評価を通して有効性を十分示している.よって,プログラミング研究会はこの研究を山下記念研究賞に推薦するものである.

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●A linear time algorithm for L(2,1)-labeling of trees
[2009-AL-127(H21.11.27)] (アルゴリズム研究会)

小野 廣隆 君 (正会員)

平成9年3月 京都大学工学部数理工学科卒平成11年3月 京都大学大学院工学研究科数理工学専攻 修士課程修了平成14年3月 京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻 博士課程修了 博士(情報学) 平成12年1月~14年3月 日本学術振興会特別研究員(DC2)平成14年4月~22年8月 九州大学大学院システム情報科学研究院・助教(助手)平成22年9月~現在 九州大学大学院経済学研究院・准教授
[推薦理由]本論文は,木に対するL(2,1)ラベリングについて,線形時間アルゴリズムを与えた初めての結果である.L(2,1)ラベリングはグラフの彩色問題を一般化した問題で,基地局の周波数割り当てなどの応用を持つ.この問題は,木幅が2のグラフに対してさえNP完全であることが知られており,木に対する高速アルゴリズムの研究が長年にわたって進められてきた.著者らのグループは,これまでにも当該研究に関する重要な成果を収めてきており,本論文は,これらの知見を生かし,線形時間アルゴリズムという最終解答を与えた重要な論文である.以上の事由により,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●スパイクレスポンスモデルの位相応答曲線
[2009-MPS-76(H21.12.18)] (数理モデル化と問題解決研究会)

飯田 宗徳 君 (学生会員)

2007年 関西学院大学理工学部物理学科卒業 2009年 東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了現在  東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程在学中 2010年より 日本学術振興会特別研究員(DC2)

 

[推薦理由]本論文では,著者らは,スパイクレスポンスモデルを用いて位相応答曲線の導出を示し,神経細胞が示す膜電位の応答特性と位相応答曲線との関係を解析的に明らかにしている.この論文は,生物実験で用いられている現象論的数理モデルと,神経細胞の膜特性を記述する生物物理的な数理モデルの関係を,理論解析により明らかにし,生物実験の知見を数理モデル研究につなぐ突破口を開いた大変重要な論文である.よって,山下記念研究賞に推薦する.
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●組込み型GUIプロダクトライン開発への実践的アプローチ
[組込みシステムシンポジウム2009(H21.10.23)] (組込みシステム研究会)

久代 紀之  君 (正会員)

1981年 三菱電機入社.現在,同社住環境研究開発センターシステムエンジニアリング部部長.人が居住する空間における各種システム化要素技術(フィールドネットワーク,組込み制御コントローラ,ヒューマンインタフェース)の研究・開発に従事.多くの前提や制約を含むあいまいなシステム要求に基づくシステム定義・システムデザイン手法に興味を持つ.筑波大学大学院ビジネス科学研究科より,経営学修士(2004)東京大学大学院工学系研究科より博士(工学)(2008)
[推薦理由]機能が類似しているソフトウェアを開発する手法としてソフトウェアプロダクトライン手法がある.この手法を組込みソフトウェアに適用する場合に,CPU能力やメモリ量の制限があるなどの問題がある.本研究では,組込み製品のGUIを対象として,上記問題を解決する形で,プロダクトラインでのコア資産である,GUI専用チップ,専用OS,開発支援ツールなどを開発して,従来のGUI開発プロセスを大幅に見直した.これをビル空調用コントローラに適用し,2.9倍の開発効率向上が確認できた.本研究は地道な研究ながら,組込み製品開発現場の問題を実践的に解決し,その効果を定量的に評価しており,山下記念研究賞にふさわしいと考えられる.
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●ソフトウェアアーキテクチャ事前設計を目的とするフィーチャモデリングのアンチパターン
[組込みシステムシンポジウム2009(H21.10.23)] (組込みシステム研究会)

中西 恒夫  君 (正会員)

大阪大学工学部通信工学科卒.奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程了.奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助手を経て,現在九州大学大学院システム情報科学研究院准教授.組込みシステム,特に組込みシステムを対象とするプロダクトラインソフトウェア工学の研究と教育に従事.
[推薦理由]機能が類似しているソフトウェアを開発する手法としてソフトウェアプロダクトラインという手法がある.この手法においてソフトウェアの相違を分析する手段としてフィーチャーモデリングが利用される.しかし,フィーチャーモデリングを適切に実施する明確な方法論がないという問題がある.本研究では,組込みシステム開発企業との共同作業を通じて,フィーチャーモデリングの実態を調査し,そのあるまじき姿をアンチパターンという形で8種類に類型化し,フィーチャーモデリング実施の指針を示した.こうした研究はこれまでになく,研究の今後の発展,産業界での利用が多いに期待でき,山下記念研究賞にふさわしいと考えられる.
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情報環境領域

●遅延状況を考慮した構造型P2Pオーバレイネットワーク構築法
[2009-DPS-139(H21. 6.19)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)

木谷 友哉  君 (正会員)

2002年大阪大学基礎工学部情報科学科卒業. 2006年同大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻博士後期課程修了.博士(情報科学). 2005年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教. 2008年より現在,静岡大学若手グローバル研究リーダー育成拠点特任助教.組合せ最適化問題,組込みシステム,車車間通信ネットワークに関する研究に従事. IEEE,情報処理学会,電子情報通信学会各会員.
[推薦理由]本論文は,P2P サービスにおけるノードの位置を検索するためのデータ構造を提案している.提案されているデータ構造は,空間充填曲線の一種であり,筆者らが従来より提案している HCRN(Hierarchical Chordal Ring Network)を基に考案されたものである.(1)ノードの2次元座標位置からグレイコードの排他的論理和を用いてノードIDを容易に計算できる,(2)地理的に近接するノードIDが空間内で必ず近接配置される,(3)スケーラビリティを持たせるため階層的な構造を実現し易い,という特徴を持ち,従来手法と比較して,(1)地理的位置情報から容易にノードIDに変換可能なこと,(2)範囲検索を高性能に実行可能なこと,(3)ノードの分布に地理的な偏りがあるときにも柔軟に対応できること,をシミュレーションにより示している.提案手法の有効性は明白であり,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●アクルーアル型故障検出器ACCMOSの実装と評価
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ2009(H21.10.9)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)

林原 尚浩  君 (正会員)

1999年 和歌山大学経済学部社会システム設計学科卒業.
2001年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了.
2004年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.博士(情報科学).
2004年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科研究員.
2005年 東京電機大学理工学部情報システム工学科助手.
2008年 京都産業大学コンピュータ理工学部助教.現在に至る.
耐故障分散システム・アルゴリズムの研究に従事.
情報処理学会,IEEE,ACM各会員.

[推薦理由]本論文では,小規模なシステム管理のためのモニタリングシステムの開発を目的に,アクルーアル型故障検出器ACCMOSを実装し,無線ネットワーク環境においてその性能評価を行っている.提案手法は,監視対象ノードのsuspicion levelを連続的な値として提供可能であることに特徴があり,ユーザビリティが高く制度の高いシステムの実現が期待される.以上により本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●コミュニケーション活性度に基づいて発話制御を行う初対面紹介エージェント
[2009-HCI-133(H21. 5.16)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)

笹間 亮平  君 (正会員)

2005年 大阪大学基礎工学部システム科学科卒業. 2007年 京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻修士課程修了.同年,日本電気株式会社入社.現在,C&Cイノベーション研究所にて,高齢者コミュニティ活性化のための個人適応技術に関する研究に従事.
[推薦理由]本研究は,今後広く世の中で利用されることが期待される対話エージェントの研究で,特に初対面者間の会話を仲介することを支援するものである.本発表は著者らの提案する手法である,話者のコミュニケーション活性度を抽出し,それに基づく適応的な行動モデルの実対話環境での実現と,その評価である.本研究では,対話エージェントに具体的なモデルを与え,そのモデルに従ったエージェントを実装および評価することにより,筆者らが提案する新しいモデルの実用性を明確にしており,新規性,実用性ともに価値が高い.このことから,本研究発表を山下記念研究賞に推薦するものである.
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●印刷情報を読み取るための“透明な板”:リモコンに搭載しやすい読み取り装置の構成
[インタラクション2010(H22. 3. 1)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)

前田 篤彦  君 (正会員)

1998年 武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業. 2003年 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士後期課程修了.博士(知識科学).同年日本電信電話株式会社入社.現在,NTTサイバーソリューション研究所にてユーザインタフェース関連の研究に従事.
[推薦理由]本研究の成果であるClearPlateは,二次元コード等印刷情報の読み取り方式である.提案方式は,ユーザが透明のシリコン板を通してコードの位置/内容を確認しながらシリコン板をコードに重ねるだけで,シリコン板端部に搭載されたカメラがコードを読み取るという,シリコンの光学的特性を活かした方式となっている.そのため,提案方式は,位置/ピント合わせが不要かつ,確認用の電子ディスプレイが不要なために低消費電力,というメリットを引き出した優れた方式となっている.さらに提案方式は,読み取り対象として二次元コードに限らず種々の印刷情報が考えられる点,およびシリコンという安価な材料を工夫して用いるという,計算機の入力デバイスとして実用的かつ示唆に富むデバイス構成法を示した点も優れている.これらの点から,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●柔軟な物体の能動的な動作の表現手法
[グラフィクスとCAD合同シンポジウム2009(H21. 6.26)] (グラフィクスとCAD研究会)

井尻  敬 君 (正会員)

博士(情報理工学). 2009年,東京大学大学院情報理工学系研究科,博士課程修了.同年,理化学研究所に入所.ユーザインタフェース,コンピュータグラフィクスに関する研究に従事.

 

[推薦理由]本研究発表は,筋肉や軟体動物などの,骨格を持たない柔軟な動きを,単純な変形規則の組み合わせで生成する手法を提案している.従来法では手続き的に記述されていた変形や動きを,局所的な伸縮を指定する一連のインタフェースの組み合わせによって,表現力を損なう事無く実装した点に新規性が認められる.
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●ランダムフォレスト法を用いた人体動作検索
[2010-CG-138(H22. 2.11)] (グラフィクスとCAD研究会)

浜田 祐一  君 (正会員)

2006年 徳山工業高等専門学校情報電子工学科 卒業.
2008年 豊橋技術科学大学工学部情報工学課程 卒業.
2010年 豊橋技術科学大学大学院工学研究科情報工学専攻 修士課程修了.
主として人体動作の検索に関する研究に従事. 現在,株式会社ウェブインパクトに勤務.

[推薦理由]本研究発表は,ヒューマノイド・CGアニメーションの製作に広く用いられている,人体の動きを3次元計測した動作データの識別に関する技術について述べたものであり,動きの特徴量に基づいて機械学習させた識別器と,その結果から得られるヒストグラムを用いて,動きの類似度に基づく検索機構を提案している. 提案手法の主たる新規性は,動作タイミングの微妙な相違にも頑健に種類を識別できる特徴量の導入と,多数の決定木を組み合わせて精度の高い識別器を得る集団学習法の一種であるランダムフォレスト法を利用した動作データのインデクス化に集約される. 提案手法では,動作データを識別する決定木をランダムフォレスト法で構築する際に,情報エントロピーと情報利得を最大化するように,特徴とする人体部位間の変位量と積分計算をする時間を最適に選択することにより,動作特徴の高速な識別機構を実現している.また,積分値を用いた特徴量を導入することにより,個人や試行毎のタイミングの微妙な相違に起因する誤分類を回避できるので,幾何学的な特徴の瞬時値を用いた従来法よりも高い検索精度を獲得している.さらには,識別の際に得られる確率ヒストグラムを用いた類似度計算に基づく順位付け法を提案しており,従来法では困難であった,ランク付けの可能な検索を実現している. 動作データを計測する設備の導入やデータの後処理には未だに多くの資金と人的コストが必要とされているので,データの再利用性の向上は重要な技術課題となっている.特に,検索して収集した同種類の動作データ群は,数値補間法等を用いて種々のバリエーションを有する動きや拘束条件を精確に満たす動きを生成するのに役立つ.さらには提案された人間動作の識別機構は,動きや身振りから意図や行動,および命令等を推測する技術にも応用される可能性を有する. 以上の理由により,本研究会は上記の研究発表を山下記念研究賞に推薦する.
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●エージェントベースシミュレーションを用いた姉川・高時川下流域における広域避難に関する考察
[2009-IS-109(H21. 9.15)] (情報システムと社会環境)
 

枝廣  篤  君 (正会員)

 

[推薦理由]本研究では滋賀県虎姫町の姉川・高時川下流域をフィールドとして,水害発生時の住民の避難行動に関する大規模なアンケート調査を自治体と連携のもと実施し,その分析結果をもとにマルチエージェントシミュレーション手法を用いた水害避難評価システムを構築している.これにより,広域避難を含めたより現実に即した避難計画の在り方について考察が可能となった.公学連携による社会調査とエージェントシミュレーション手法を組み合わせた実践的研究は,防災のみならず社会情報システム分野にとって重要であり,今後の更なる成果も期待できることから,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●転置ファイルによる大規模n-gramデータの検索システム
[2009-FI-95(H21. 7.28)] (情報基礎とアクセス技術)

矢田  晋 君 (正会員)

2004年3月 徳島大学 工学部知能情報工学科 卒業 2006年3月 徳島大学大学院 工学研究科知能情報工学専攻博士前期課程 修了 2008年3月 徳島大学大学院 先端技術科学教育部システム創生工学専攻知能情報システム工学コース博士後期課程 修了 2008年4月 - 2010年3月 日本学術振興会特別研究員
[推薦理由]本研究は,大規模N-gramデータを効率的に検索する課題に取り組んだものである.N-gramデータを特徴を活かし,N-gramデータの符号化,solid state diskの利用,および転置索引の展開により,ディスク使用量が小さく,索引構築・検索の効率が高い実用的な転置データベースを実現している.プレゼンテーションも明快かつ簡潔である.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●HDTV対応双方向通信用H.264/AVCリアルタイムソフトウェアコーデック
[2010-AVM-68(H22. 3. 4)] (オーディオビジュアル複合情報処理研究会)

佐野  卓 君 (正会員)

2002年 東京理科大学 工学部 卒業 2004年 東京理科大学大学院 工学研究科 修士課程 修了同年 日本電信電話株式会社 入社現在 NTTサイバースペース研究所にてディジタル映像符号化, MPEG関連ソフトウェアの研究開発に従事
[推薦理由]発表者らが開発したH.264ソフトウェアコーデックは,市販のパソコン1台で1920×1080画素のフルHDTV映像をリアルタイムかつ低遅延にエンコード・デコード同時処理することができる.従来はフルHDTVをエンコードのみ可能なもの,もしくは1280×720画素のHDTVをエンコード・デコード同時処理するものは存在していたが,本コーデックの性能は実現されていなかった.本発表では,そのコーデック性能を実現するための並列処理や低遅延処理等に関する構成技術について詳しく述べるとともに,ソフトウェア規模やCPU使用率等の詳細情報についても言及している.また符号化映像品質を参照ソフトウェア(JM)と比較することにより本コーデックの高い有効性についても示しており,その学術的価値は高く評価できる.
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●会議支援システムを用いた会議内容情報の再利用性の考察
[2009-GN-72(H21. 5.21)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)

本橋 洋介 君 (正会員)

2004年 東京大学工学部産業機械工学科卒業 2006年 東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻修了同年 日本電気株式会社入社現在,同社情報・メディアプロセッシング研究所にて,グループウェア・ナレッジマネジメントシステムに関する研究に従事

 

[推薦理由]本研究発表は,会議での議論内容の再利用性を向上するシステムの提案である.ホワイトボードへの書き込み情報同士を,時間・空間などの属性情報の近接性に基づいて自動的に関係付ける点に特徴があり,従来困難であった,詳細な議論経緯の再現を可能にしている.試作システムを用いて,議論経緯の想起効果を検証する実験を行い,従来手法に対する優位性を示した.業務活動の過程で生み出される情報の再利用性を向上する本研究は,実業務環境における生産性の向上に寄与する一つの方向性を示すものであり,今後のグループワーク支援研究の発展に寄与するものである.
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●群衆コミュニケーション支援のための理論的枠組とインタフェースの試作
[2010-GN-75(H22. 3.19)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)

瀧  寛文 君 (正会員)

2008年 大阪大学 基礎工学部 システム科学科 卒業
2010年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報システム学専攻 修了
2010年 (株)日立製作所 情報・通信システム社 入社

[推薦理由]本研究発表は,多人数からなるオンライン上のユーザ集団を,社会心理学の知見に基づき「群衆」と定義し,「群衆」を対象とした新たなコミュニケーションメディア設計のための理論的枠組みを提案するものである.「群衆」を対象としたコミュニケーションメディアという切り口に高い新規性があることに加え,オンラインで形成される「群衆」の形成原理や行動特性が現実空間の「群衆」と多くの類似点を持つことを示した.また,提案する理論的枠組みは応用範囲が広いものであるため,今後さらに重要性を増すと考えられるオンラインコミュニケーションメディアの発展に大きく貢献するものと期待される.
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●異種XMLデータに対するファセット検索手法の提案
[2009-DD-73(H21. 9.25)] (デジタルドキュメント研究会)

駒水 孝裕 君 (学生会員)

2009年 筑波大学第三学群情報学類 卒業同年   筑波大学大学院博士前期課程システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻 進学現在に至る

 

[推薦理由]本論文では,これまでXMLデータの検索手法において問題とされてきた検索構文作成や事前のデータ構造把握といった負荷に対し,探索的検索手法であるファセット検索を適用することにより,システム側でその負荷を吸収し利用者の検索行動の利便性を高める手法を提案している.本論文は,近年身の回りにあふれる膨大なXMLデータを効率的かつ効果的に検索するための新しい手法の提案であり,今後一層コモディティ化が進むと   思われるXMLデータに対して,新たなデータ活用手法の可能性を示している.また,問題の十分な分析及び的確な解決手法と実験による有効性が示されており,今後のデジタルドキュメント研究の進歩に貢献する論文であると言える.以上の理由から,本論文を山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●DLNAデバイスの操作履歴取得手法の検討
[2010-MBL-52(H22. 1.29)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)

猿渡 俊介 君 (正会員)

2007年 東京大学大学院博士課程修了. 2003年~2004年 IPA未踏ソフトウェア創造事業. 2006年~2008年 日本学術振興会学振特別研究員. 2007年~2008年 イリノイ大学客員研究員.現在 東京大学先端科学技術研究センター助教.専門はワイヤレスネットワーク,センサネットワーク,システムソフトウェアなど. 2009年電子情報通信学会論文賞.

 

[推薦理由]本論文では,DLNAデバイスの操作ログを用いてリコメンドサービスなどを行うために,DLNAデバイスの操作履歴を取得する方式について提案と実装を行っている.提案手法は,既存のARP SPOOFINGによるスニファーの仕組みを活用しているものだが,既存DLNA機器への変更を必要としないという現実的な制約条件の下で,目的を実現するためのアプローチが明確に記述されており,論文誌に値する有用性を持つ研究と考える.構成,関連研究との比較も十分であり,かつ提案方式を実装・評価を行っていることとも高く評価できる.今後の操作ログ取得・利用の研究の発展に寄与すると考えられるので,本論文を山下賞に推薦する
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●Twitterにおけるコンテキストと単語の相関関係分析
[2010-MBL-53(H22. 3.27)]
(モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)

荒川  豊 君 (正会員)

2001年3月 慶應義塾大学理工学部情報工学科卒業 2003年3月 同大学大学院理工学研究科前期博士課程修了 2006年3月 同大学大学院理工学研究科後期博士課程修了.博士(工学) 2006年4月 同大学大学院理工学研究科特別研究助手      (2007年4月から特別研究助教) 2009年3月 九州大学大学院システム情報科学研究院助教主に通信プロトコル,ネットワークアプリケーションに関する研究に従事. 2008年APCC2008 Best Paper Award,2009年MBL研究会優秀論文賞, 2010年DICOMO優秀プレゼンテーション賞,受賞情報処理学会,IEEE,電子情報通信学会,各会員
[推薦理由]本論文では,コンテキストと単語の相関関係を明らかにすることを目的として,ツイッターを対象とし,ツイートの位置情報や時間情報から得られる文字列の分析と,実際のコンテキスト情報との相関関係を分析している.そして大量のツイートを収集し,取得したツイートが含む位置に関連するランドマーク情報の割合や発信時刻に関連するテレビ番組情報を含む割合を具体的に示しており,基礎データとして有効である.ツイートやランドマーク情報,テレビ番組情報の取得方法には工夫が見られる.位置と時間情報を含むツイートの分析には新規性があり,他の研究にも応用可能で,関連分野への寄与が大きい.よって,ここに山下賞に推薦する.
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●Wolf及びLambに対する安全性の高い生体認証の提案
[コンピュータセキュリティシンポジウム2009(H21.10.27)] (コンピュータセキュリティ研究会)

村上 隆夫 君 (正会員)

2004年 東京大学工学部電子情報工学科卒業. 2006年 同大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻修士課程修了.同年 (株)日立製作所入社.以来,同システム開発研究所にて生体認証技術の研究開発に従事. 2008年 CSS2008優秀論文賞受賞. 2009年 CSS2009優秀論文賞受賞.

 

[推薦理由]生体認証における Wolf とは,複数の他人のテンプレートに対して一致すると高い確率で判定される生体情報を有する個人が存在してしまうという脆弱性であり,一方,Lamb とは,複数の他人の生体情報と一致すると高い確率で判定されてしまうテンプレートを有する個人が存在してしまうというものである.一般的に言って,Wolfを考慮した手法は多いが Lambを考慮したものはほとんどないため,本研究では,Wolf及びLambの存在を考慮した認証方法を提案している.そのため,従来手法よりも実運用において有効性が高く,またそれを,データベースを用いた評価実験により確認している.研究として重要であり,またその完成度も高く,山下記念研究賞として相応しい.
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●生体とデバイスの感度の違いを利用した映像の盗撮防止方式
[コンピュータセキュリティシンポジウム2009(H21.10.27)] (コンピュータセキュリティ研究会)

山田 隆行 君 (学生会員)

2000年 防衛大学校理工学研究科情報数理専攻修了
現在、総合研究大学院大学複合科学研究科 情報学専攻 博士後期課程在学中

[推薦理由]本論文は,スクリーンやモニタに表示した映像をデジタルビデオカメラで違法に撮影する盗撮行為を防止する方式を提案するものである.提案方式では,撮影映像にノイズを重畳する光源を映像表示装置に組み込むことで,人の視覚には影響を与えずに,かつ,既存のデジタルビデオカメラに新たな機能を追加することなく盗撮防止方式が実現されている.したがって,シンプルで実用性が非常に高いシステムであるといえる.さらに,本研究では提案方式が実装されており,それによって評価実験も行われていることから,提案方式の有効性も信頼できるものとなっている.よって,山下記念研究賞として相応しい.
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●車線変更軌跡の確率的予測モデル
[2009-ITS-37(H21. 6.12)] (高度交通システム研究会)

西脇 由博 君 (正会員)

2005年3月 名古屋大学工学部電気電子情報工学科卒業
2010年3月 名古屋大学大学院情報科学研究科博士課程後期課程卒業 博士(情報科学)
同年、ボッシュ株式会社入社

 

[推薦理由]高度交通システム分野においては,ここ数年,安全運転支援や交通環境のシミュレーション等の需要に応える形でドライバーの行動に関する研究が始まっており,本論文で提案されている個々のドライバの運転傾向とその揺らぎを表現するモデルは,運転安全性の応用面から特筆すべき知見を得ている.車線変更のモデル化に,新たな予測方式を導入して取り組んでおり, ドライバの個性を反映した確率モデルを地道に導いた上で,ドライビングシミュレータで集めた運転データとの検証も行っている点が評価できる.フィールドでの検証という大きな課題は残るが,得られた知見と研究の課題も客観的に捉えており,ドライバの運転行動を計算機でシミュレートする場合に参考となり,今後の成果も多く期待できる.
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●端末伝送型インターネット放送における再生中断に関する評価
[2009-EVA-29(H21.8. 5)] (システム評価研究会)

義久 智樹 君 (正会員)

2002年 大阪大学工学部卒業(楠本賞,工学賞). 2003年 大阪大学大学院情報科学研究科修士課程修了(期間短縮). 2005年 大阪大学大学院情報科学研究科博士課程修了(期間短縮),博士(情報科学).京都大学学術情報メディアセンター助手,助教,および大阪大学サイバーメディアセンター講師を経て2009年より大阪大学サイバーメディアセンター准教授.この間,カリフォルニア大学アーバイン校客員研究員. ICMU2005/2006 Best Paper Awardを連続受賞.IEEE PacRim2007 Golden Paper Award.ビデオオンデマンド,ストリームデータベースに関する研究に従事.
[推薦理由]音楽や映像といったストリーミングデータを再生端末間で送受信する端末伝送型インターネット放送では,再生開始時刻までに必要なデータの受信が間に合わないと,再生に中断が発生することから,この中断時間の削減が課題となっている.これまでに提案された殆どの手法は,受信先となる再生端末が長時間変わらないことを前提としているため,受信先の再生端末が必要なデータを持っていない場合は再生中断時間が長くなるという問題があった.この研究では,受信先となる再生端末を頻繁に変えて再生中断時間を短縮する手法を提案するとともに,その評価を実施し,既存手法よりも再生中断時間を短縮できることを確認した点で有用性の高い研究であり,システム評価研究会からの山下記念研究賞候補に推薦したい.
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●看護業務支援のためのセンサネットワーク・アーキテクチャ
[2009-UBI-23(H21. 7.16)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)

大村  廉 君 (正会員)

1999年 慶應義塾大学理工学部 卒業 2004年 同大学大学院後期博士課程 修了,博士(工学)同年 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 入社 2007年 慶應義塾大学理工学部 助教 2010年 豊橋技術科学大学 講師現在に至る.情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員
[推薦理由]本論文は,病院内での看護師の行動認識を可能とする無線センサネットワークの設計と実装について述べている.無線センサネットワーク層,センサネットワーク管理ミドルウェア層,コンテキスト管理層,アプリケーション層の4階層を持つアーキテクチャを構築した.また,本提案の特徴として,ボディエリアセンサをBluetooth,環境設置センサをZigBeeを用いて,ヘテロジニアス な無線センサネットワークを実装した.その結果,88%以上の正答率で看護行為を識別し,特に重要な看護行為においては95%以上の正答率を実現している.実際の病院における実践的なシステム設計と評価実験は,ユビキタスコンピューティングの実用化に貢献する研究事例として高く評価できる.
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●ウェアラブルセンサによるモノを用いた行動の認識について
[2010-UBI-25(H22. 3.27)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)

前川 卓也 君 (正会員)

2003年3月 大阪大学工学部卒業.2004年3月 大阪大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了. 2006年3月 大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了.2006年4月 日本電信電話株式会社入社 コミュニケーション科学基礎研究所配属,現在に至る.センサデータ処理,Web情報処理の研究に従事.情報処理学会,日本データベース学会各会員.
[推薦理由]行動認識は,コンテキストアウェアサービスやライフログアプリケーション実現のための重要な基盤技術である.ウェアラブルセンサを用いた従来研究においては加速度センサやマイクを用いたものが多く,動きや音の特徴が少ない行動の認識は困難であった.本論文では,カメラ,マイク,加速度センサを統合した手首装着型センサデバイスを試作し,「コーヒーを作る」,「植物に水やりをする」,「掃除機をかける」,「歯を磨く」といった,モノを利用した手作業行為を識別するシステムを提案した.そして,画像,音響,加速度の特徴量の組み合わせと識別精度の関係を詳細に調べて報告した.ユビキタスコンピューティングの実用化に貢献する研究事例として高く評価し,推薦する.
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●Open Autonomic Networking (OAN) SDKを用いたネットワーク管理ツールへの応用
[2009-IOT-6(H21. 6.27)] (インターネットと運用技術)

新  善文 君 (正会員)

1989年 福井大学 工学部電気工学科卒業 1991年 同大学院 工学研究科電気工学課程修了 1991年 (株)日立製作所 入社 2004年 アラクサラネットワークス(株)に出向 IPv6, NETCONFなどのネットワーク技術開発に従事現在,同社主任技師情報処理学会,電子情報通信学会各会員
[推薦理由]本論文では,NW運用の自動化およびNW管理と,ITシステムとの親和性を向上するべく,NETCONFをベースとしたOAN SDK (Open Autonomic Networking Software Development Kit)の開発を報告している.現状のNW機器では,その運用管理インターフェイスとしてCLI (Command Line Interface)が利用されているが,これは人間が対話的に利用することを前提として設計されており,ITシステムのような相互接続に対する機能拡張は十分ではない.本論文で提案するSDKは,NW機能のデータモデルを拡張性のあるオブジェクトとして定義し,既存のソフトウェア開発環境で扱いやすいJavaを用いた制御プログラムの開発を支援する.また本論文では,NW APIを4種類に分類し(CLI+SNMP, プロトコルによる通信, 高機能API, 低機能API),それぞれ5項目(制御, 作成, 運用, 開発環境, 信頼性)による評価を行なってOAN SDKの支援方針を決定している.さらに論文内では,実際にWeb認証機能の開発を行ない,その有効性を検証している.本SDKは,実際にNWの運用管理に携わる現場のニーズを丹念に精査して設計/開発したものであり,非常に有益である点を評価できる.
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●集約Skip Graph: 効率的な集約クエリを実現するSkip Graph拡張の提案
[インターネットと運用技術シンポジウム2009(H21.12.11)] (インターネットと運用技術)

阿部 敏之 君 (正会員)

2010年3月 大阪市立大学大学院 創造都市研究科都市情報学専攻 修士課程修了
同年4月 株式会社 日立製作所入社 

[推薦理由]本論文は,構造化オーバーレイNWであるSkip Graphにおいて,クエリメッセージの増加を抑える方式を提案している.Skip Graphでは,キーをインデックスとして値を保持する分散DBを構築できるが,ある範囲内の全キーを対象とした検索(集約クエリ)を処理する場合,対象範囲内の全ノードと情報交換をする必要があるため,範囲の大きさに合わせてクエリメッセージ数も増加する問題が存在した.これを解決するため,本論文が提案する方式は,事前に部分範囲の集約情報を用意しておき,任意範囲の集約クエリに対してこれらの情報を利用することで,クエリメッセージの増加を抑える.本論文では,提案方式に対するアルゴリズムの定式化と共にシミュレーションを用いた従来方式との比較を行ない,効果的であることを検証している.さらに本提案は,多数のセンサーが管理する情報を効率的に処理するなど,将来的な応用も期待され,理論/応用の両面において有益である点が評価できる.
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フロンティア領域

●ウェブ検索ログを用いたラベル伝播による意味カテゴリ獲得
[2009-NL-191(H21. 5.21)] (自然言語処理研究会)

小町 守 君 (正会員)

2005年東京大学教養学部基礎科学科科学史・科学哲学分科卒. 2007年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了. 2008年より日本学術振興会特別研究員(DC2)を経て, 2010年博士後期課程修了.博士(工学).現在同研究科助教. 2010年5月よりアップルジャパン株式会社にてソフトウェアエンジニアとして入力メソッドの研究開発に従事(兼務).大規模なコーパスを用いた意味解析および統計的自然言語処理に関心がある.言語処理学会第14回年次大会最優秀発表賞受賞.人工知能学会,言語処理学会,ACL各会員.
[推薦理由]本論文は,ウェブ検索ログを用いて,少数のシード単語からラベル伝播によって意味カテゴリを学習する半教師あり手法を提案している.ラベル伝播によるクラスタリング手法は近年注目を集めつつある手法であるが,この手法を検索ログに適用することにより,高精度な意味カテゴリが得られることを示している.半教師あり機械学習手法の効果的な応用として,また検索ログという言語資源の有効的利用を示すものとして,影響力の大きい,独創的な研究である.よって,本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●Latent Dirichlet Allocationにおける決定論的オンラインベイズ学習
[2009-NL-193(H21. 9.28)] (自然言語処理研究会)

佐藤 一誠 君 (学生会員)

2010年現在,東京大学大学院情報理工学系研究科 博士課程に在学中. 2008年度より日本学術振興会特別研究員(DC1).ベイズ学習を中心にデータマイニングと機械学習の研究に従事. 2008年度 情報処理学会・コンピュータサイエンス領域奨励賞 受賞. JSAI Research Award 2008 受賞.
[推薦理由]本研究は近年様々な問題に対して用いられている統計的トピックモデルの1つであるLatent Dirichlet Allocation (LDA)のオンライン学習手法を提案している.提案手法では,従来手法では所与であったDirichlet分布もオンラインで学習でき,局所解へ収束することも保証されている.文書モデルの実験では,一括学習と同程度の性能を示すことも示されている.オンライン学習は,大量のデータを用い,なおかつそのデータが漸増していくような場面で特に重要である.LDAを含むトピックモデルは,マルチモーダル物体認識などにも応用されている手法であり,本研究の成果が及ぶ範囲は自然言語処理に留まらない.よって,本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●複数論点交渉問題における相互依存関係指標およびスケーラブルな交渉メカニズムの提案
[2010-ICS-159(H22. 3.15)] (知能システム研究会)

藤田 桂英 君 (学生会員)

2008年3月 名古屋工業大学情報工学科 卒業
2010年3月 同大学大学院産業戦略工学専攻 修了
2010年4月 同大学大学院情報工学専攻 入学.
現在博士後期課程に在学中
2010年6月-現在 米国マサチューセッツ工科大学
Center for Collective Intelligence, Sloan School of Management, Visiting Student
2009年第24回電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術学生賞)受賞.
2007年 International Conference on Knowledge, Information and Creativity Support Systems (KICSS2007)
Best Student Award 受賞他.情報処理学会, 人工知能学会, 電子情報通信学会, IEEE 各学生会員.

[推薦理由]本発表では複数論点交渉問題に対する自動交渉プロトコルの開発という日本での既存研究が少ない有効性が高い問題を扱っている.特に,現実に近い設定で交渉プロトコルにおけるスケーラビリティの高さが要求される論点が相互依存関係である場合を想定しているのは研究としての有効性が高い.本発表では主に,論点グループに基づく交渉プロトコルを提案していたが新規性および有効性が高いと考えられる.また,シミュレーション実験を用いて既存の交渉プロトコルと比較して提案プロトコルが良質な解を発見できていることが示されている.さらに,既存手法で重大な問題であったスケーラビリティを解決していることも成果が大きい.以上から,本発表を山下記念研究賞に推薦する.
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●Improvements of IP Representation, Fitting and Registration
[2009-CVIM-167(H21. 6. 9)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)

鄭  波  君 (正会員)

2001 北京工業大学 コンピュータ科学卒.
2005 東京大学大学院 工・物理工学 修士了.
2005 富士通株式会社 入社.
2008 東京大学大学院 情報理工・電子情報工 博士了.
現在,同大生産技術研究所特任助教.
IEEE OTCBVS2008最優秀論文賞.
多項式による表現,不変性,及び医用画像への応用に関する研究に従事.

[推薦理由]陰多項式を用いて形状をモデリングする手法の構築を目的としている.まず,陰多項式に基づく領域分割をおこない,陰多項式表現に適した分割を得る手法を提案している.次に,陰多項式の次数も同時に効率的に推定する手法を提案している.また,陰多項式の勾配を利用した高速な位置合わせ手法を提案している.これらの提案により,コンピュータビジョンの様々な問題に対し陰多項式の適用が容易になり,陰多項式を新たな問題解決手法へと発展させている.以上より,本論文は平成22年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.  
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●コンピュテーショナルフォトグラフィ理解のための光学系入門
[2010-CVIM-171(H22. 3.18)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)

日浦 慎作 君 (正会員)

1993年 大阪大学基礎工学部制御工学科飛び級中退.
1997年 同大大学院博士課程短期修了.博士(工学).
同年 京都大学リサーチアソシエイト.
1999年 大阪大学大学院基礎工学研究科助手,2003年同助教授.
2008年 マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員准教授.
2010年 広島市立大学大学院情報科学研究科教授.
三次元画像計測とそのVR応用等の研究に従事.
1993年 電気関係学会関西支部連合大会奨励賞.
2000年 画像センシングシンポジウム優秀論文賞.
電子情報通信学会,情報処理学会,日本VR学会各会員.

[推薦理由]コンピュテーショナルフォトグラフィ(以下,CPとする)に関する光学系の基礎をコンピュータビジョンやイメージベーストレンダリングで用いられる用語や知見と関連づけながら解説することを目的としている.CPに関する研究は,近年盛り上がりを見せているが,それらを理解するには光学系の深い知識を要することが多い.本解説によりCPに関する最新の技術の理解を容易にし,CPの世界の門戸を開いたという点は特筆に値する.以上より,本論文は平成22年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●計測学習を取り入れたロボット制御教材
[2009-CE-99(H21. 5.23)] (コンピュータと教育研究会)

紅林 秀治 君 (正会員)

1987年 静岡大学大学院教育学研究科修了
.同年より静岡県内の公立中学校,工業高校に勤務.
2005年より静岡大学教育学部助教授.
小中学生を対象とした技術教育教材(主に計測・制御学習用教材)の開発とその教育効果に関する研究に従事.
2010年より同大学教授.日本産業技術教育学会学(論文賞)受賞(2010年),
情報処理学会情報教育シンポジウムにて,プレゼンテーション賞(2002年),論文奨励賞(2004年),
論文賞(2005年),発表賞(2010年)受賞.
日本産業技術教育学会会員,電気学会会員

[推薦理由]学習要領の変化も踏まえた,実機と教育用言語を組み合わせた計測学習教材の作成について,学習モデルから設計,実装まで詳細に説明されており有用であると考えられる.現場の教員からも肯定的な評価を得ており,今後の発展が期待される.プログラミングによるロボット制御の教育研究として,本発表のみならず,前年度からのすぐれた積み重ねがあり,興味深い内容である.数年後に必修になる中学校技術科の計測・制御の学習について,計測と制御を組み合わせた教材を提案し,中学校の授業の中で行えることを実証した.世の中への貢献度も高い.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●CSアンプラグドの学習法とそのユニバーサル化
[情報教育シンポジウム2009(H21. 8.20)] (コンピュータと教育研究会)

間辺 広樹 君 (学生会員)

1986年:東京理科大学理工学部数学科 卒業 1986年:神奈川県立高校 勤務 2007年:神奈川障害者職業能力開発校 勤務 2009年:神奈川県立秦野総合高等学校 勤務    現在,情報科・数学科教諭として従事 2010年:大阪電気通信大学医療福祉工学研究科博士後期過程 入学    現在,社会人学生として在学中 情報処理学会,日本情報科教育学会,日本教育工学会各会員
[推薦理由]CSアンプラグドはコンピュータを使わずに体を動かす活動を通して情報科学の基礎を学ぶことができる教育法のため,身体的障害を持つ生徒にとっては期待する学習活動ができるとは限らないという点に着目し,コンピュータを用いたオンラインコンテンツを通じて,パソコン操作で体験的学習ができるという斬新な仕組みを構成し,実際に授業の中で利用し,その有用性を示している. また,3次元仮想世界におけるCSアンプラグドに関する国際的な研究に参加し,仮想空間において,体験的な学習を行えるという実験的な授業を行っている.このようにCSアンプラグド学習法のユニバーサル化を行うという内容が画期的であり,世の中への貢献度も高い.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●近代日本(1868~1945)における身装電子年表
[人文科学とコンピュータシンポジウム2009(H21.12.19)] (人文科学とコンピュータ研究会)

高橋 晴子 君 (正会員)

1971年 神戸親和女子大学文学部英文学科卒業
2003年 大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了
2007年 大阪樟蔭女子大学教授 現在に至る
2007年 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター招へい教授 現在に至る
2005年-2008年 アート・ドキュメンテーション学会幹事長
2007年-2008年 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立民族学博物館文化資源研究センター客員教授
関西データベース協議会奨励賞(データベースシステムの部)(1987年),
第8回図書館サポートフォーラム賞(2006年),第2回ビューティ・サイエンス学会賞(2007年),
日本風俗史学会学会賞第16回野口真造記念賞(2007年)
「身装-身体と装い」の情報処理に関する研究に従事

[推薦理由]本発表は,近代日本の「身体と装い(身装)」を網羅した,国立民族学博物館で公開されたデータベースに関するものである.身装電子年表は,資料のみならず関連の画像を同時に表示することによって,身装関連知識を効果的に入手することが可能となっている.また,シームレスな移動を可能としており,時間の流れとともに変化する身装の様子を端的に,かつ総体的に読み取ることができる.検索のスムーズさなどについて今後の課題はあるものの,その完成度は非常に高く,コンピュータの利点を生かした人文科学研究の資料情報提示の代表的事例となる研究であるといえる.よって本研究賞に推薦するものである.
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●中古和文を対象とした形態素解析辞書の開発
[2010-CH-85(H22. 2. 6)] (人文科学とコンピュータ研究会)

小木曽智信 君 (正会員)

1995年3月 東京大学文学部日本語日本文学(国語学)専修課程卒業
1997年3月 東京大学大学院人文社会系研究科日本文化研究専攻日本語日本文学専門分野修士課程修了
2001年6月 同博士課程単位取得満期退学
2001年7月 明海大学外国語学部専任講師
2006年4月 独立行政法人国立国語研究所研究開発部門言語資源グループ研究員
2009年10月 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所言語資源研究系准教授
日本語の文法・語彙の通時的研究の傍ら,「現代日本語書き言葉均衡コーパス」の構築,
形態素解析辞書UniDicの開発,日本語の歴史コーパスの構築のための研究に従事.

[推薦理由]本発表は,中古(平安時代)の和文解析辞書構築のための基礎的な論考である.発表者は,今までの近代文語解析辞書構築の実績を踏まえ,前近代の日本文学の総合的な解析のための辞書構築の一環として,「中古和文Unidic」の開発を行った.結果的に95%の精度での解析を可能とするシステムの構築に成功した. サンプルとするテキストの拡大など,今後も進めていくべき課題はあるものの,発表の内容は手堅く,十分に再検証に足るもので,関連研究の広がりが期待できる.かつ,その精度の高さから今後の本システムの有用性は高いものと判断する.よって,本研究賞に推薦するものである.
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●Spectrogram consistency and its application to phase reconstruction
[2009- MUS-81(H21. 7.30)] (音楽情報科学研究会)

Jonathan Le Roux 君 (正会員)

2003年7月パリEcole Normale Superieure数学科卒業.
2009年3月東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.
2009年3月パリ第6大学大学院電気通信情報理工学研究科博士課程修了.
博士(情報理工学).
2009年4月よりNTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチアソシエイト.
統計的手法による音響信号処理の研究に従事.
日本音響学会,IEEE 各正会員. 

[推薦理由]音楽信号処理の多くの手法では,短時間フーリエ変換(STFT)を介した振幅スペクトログラム領域でモデル化や加工がなされることが多い.このため,加工された振幅スペクトログラムや振幅スペクトログラムのモデルから,いかに高品質な音響信号を復元できるかは重要な課題である.STFTは時系列信号の冗長な表現であるため,任意に選んだ複素数の時間周波数配列がある時系列信号のSTFT表現となるとは限らない.本研究では,任意の複素数配列がどれだけ時系列信号に対応したSTFT 表現であるらしいかを表す無矛盾性規準を導き,更に,これを局所的に計算できる近似的規準を導入することにより,振幅スペクトログラムに対して位相を付加するための高速アルゴリズムを実現している.本発表は,音楽情報処理の高品質化技術を実現しただけでなく,発表資料や説明も魅力的で説得力が高かったため,極めて山下記念研究賞にふさわしいと考える.
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●最小相対エントロピー識別学習に基づくカーネルマシンを利用した音声認識
[2009-SLP-77(H21. 7.17)] (音声言語情報処理研究会)

久保陽太郎 君 (正会員)

2007年3月 早稲田大学理工学部情報学科 卒業 2008年3月 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工学専攻 修士課程 修了 2009年4月より日本学術振興会 特別研究員 (DC2) 2010年3月 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工学専攻 博士後期課程 修了 2010年4月より アーヘン工科大学客員研究員 2010年10月より日本電信電話株式会社コミュニケーション科学基礎研究所に所属音声認識における音声特徴量抽出および音響モデルの研究に従事.博士 (工学).
[推薦理由]音声認識においてはHMMが一般的に用いられているが,その高精度化・頑健性の向上に向けた研究が精力的に行われている.一方,近年機械学習において,カーネル法に基づく方法が注目を集めているが,HMMのような時系列パターンへの適用は十分に行われていなかった.本研究では,Log-Linearタイプの出力分布を持つHMMを最小相対エントロピー識別によって学習させる時の目的関数,および学習されたモデルのパラメタにカーネル法に基づく表現を導入しており,非常に興味深い.発表者らは同一年度にこれを発展させた研究も発表している.
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●Dirichlet事前分布を用いた音声区間検出の検討
[2009-SLP-79(H21.12.22)] (音声言語情報処理研究会)

藤本 雅清 君 (正会員)

2004年03月 龍谷大学大学院 理工学研究科 電子情報学専攻 単位取得退学 2004年04月 (株)国際電気通信基礎技術研究所 音声言語コミュニケーション研究所 研修研究員 2005年03月 学位(工学博士)取得 2005年04月 (株)国際電気通信基礎技術研究所 音声言語コミュニケーション研究所 研究員 2006年04月 日本電信電話(株) NTTコミュニケーション科学基礎研究所 リサーチアソシエイト 2008年01月 日本電信電話(株) NTTコミュニケーション科学基礎研究所 社員 現在に至る雑音下音声認識,雑音抑圧,音声区間検出に関する研究に従事 2003年日本音響学会 粟屋潔学術奨励賞,2008年電子情報通信学会 MVE研究会MVE賞各受賞電子情報通信学会,日本音響学会,IEEE,ISCA各会員
 
[推薦理由]音声認識を雑音が存在する実環境に適用する際に,発話音声区間を正しく検出することがきわめて重要である.近年,この音声区間検出のための統計的モデル・学習に関する研究が精力的に行われているが,発表者らは先駆的に研究を行ってきた.本研究では,Switching カルマンフィルタとGMMに基づく方法に,Dirichlet事前分布を導入することによる改善を報告しているが,高い性能を実現しており,一連の研究は高い評価に値するものである.
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●将棋における合議アルゴリズム:既存プログラムを組み合わせて強いプレイヤを作れるか?
[ゲームプログラミングワークショップ2009(H21.11.14)] (ゲーム情報学)

小幡 拓弥 君 (学生会員)

2009年 電気通信大学 電気通信学部 情報工学科 卒業
2009年より 電気通信大学大学院 電気通信学研究科 情報工学専攻 博士前期課程 在学

[推薦理由]本発表では,強い思考ゲームプログラムを作るための手法として,「合議アルゴリズム」を提案し評価している.「合議アルゴリズム」はメモリを共有しない疎結合の計算機上での実装が容易であり,コンピュータ将棋を対象にした実験により効果が確認されている.提案手法はコンピュータ将棋だけでなく,ゲーム木探索を行う様々な研究分野への応用が期待される.以上,本発表は新規性と実用性ともに山下記念研究賞に相応しいと判断する.
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●物語テキストを基にした漫画のコマの生成手法の提案
[2009-EC-13(H21. 5.22)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)

髙嶋 航大 君 (学生会員)

2007年,近畿大学工業高等専門学校専攻科生産システム工学専攻卒業.
2009年,筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻 博士前期課程修了.
同年,筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻 博士後期課程進学.
現在に至る.
情報処理学会,知能情報ファジィ学会 各会員.

[推薦理由]発表者は,物語のテキストから漫画を自動生成するという新しいエンタテインメント技術を着想し,その最初の手掛かりとして漫画のコマ割りを自動的に生成する技術を実現,評価している.本研究は自動生成という遠大なテーマの初期段階にあるため,その内容は現時点では粗削りなものであるが,着想はエンタテインメント分野の研究として斬新なものであり,研究分野の新しい方向性を示した研究という観点から価値が高いといえる.このことより,当研究会は本発表を山下記念研究賞の候補として推薦するものである.
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●タンパク質の特性に基づくunboundドッキングのための剛体予測手法の改良
[2010-BIO-20(H22. 3. 4)] (バイオ情報学研究会)

松崎 裕介 君 (正会員)

2008年3月 東京工業大学 工学部 情報工学科 卒業 20010年3月 東京工業大学大学院 情報理工学研究科 計算工学専攻 修士課程修了同年4月 株式会社NTTデータ 入社
[推薦理由]本研究では,タンパク質間ドッキングの計算機予測の精度向上を目的として,剛体予測手法における目的関数を対象タンパク質の性質に基づいて変化させることが着想され,評価実験を通じてその具体的手法が示されている.提案法では,ドッキングの目的関数における幾何学的な形状相補性の寄与と物理学的な静電相互作用の寄与の間に動的な重み付けを導入した.重み決定には9種類の手法を考案し,ベンチマーク評価を通じて適切な手法を示した.数理的手法,物理化学的シミュレーションなどの多彩なアプローチを融合的に取り入れており,学際的応用研究として優れていると判断し,山下記念研究賞の候補として推薦する.
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