2024年度詳細

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2024年度(令和6年度)山下記念研究賞詳細

 山下記念研究賞は,研究賞として本会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は38研究会の主査から推薦された計54編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い決定の上,理事会(2024年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の下記受賞者には,3月に開催される第87回全国大会で表彰されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB QS

<情報環境領域>
DPS HCI IS IFAT DC MBL CSEC ITS UBI IOT SPT CDS DCC

<メディア知能情報領域>
NL ICS CVIM CG CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE

コンピュータサイエンス領域

●ドメイン特徴に基づくランキング学習モデルのドメイン適応
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2024)(2024/2/28)](データベースシステム研究会)
 ito

伊藤 拓誠 君 (学生会員)

2024年3月 筑波大学情報学群知識情報・図書館学類 卒業.
2024年4月 筑波大学大学院人間総合科学学術院人間総合科学研究群情報学学位プログラム 博士前期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 情報検索分野において,性能の良いランキングモデルを構築することは非常に重要である.本論文は,ランキング学習でターゲットドメインの適合性判定データが利用できない設定において,ランキング学習モデルのドメイン適応を行うことを目的とし,ターゲットドメインからドメイン特徴を抽出し,ドメイン特徴のみからターゲットドメインにおけるランキングモデルの最適な重みを予測する重み予測モデルを提案している.実施した評価実験において,重み予測モデルで重みを予測したモデルの性能が,ドメインの差異を考慮せずに学習した汎用的なモデルの性能を上回るという結果を得ることで,提案手法の有用性を示している.以上より,本論文を山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●動的モード分解を活用した高速将来予測アルゴリズム
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2024)(2024/2/29)](データベースシステム研究会)
 chihara

千原 直己 君 (学生会員)

2023年3月 大阪大学工学部電子情報工学科 卒業.
2023年4月 大阪大学大学院情報科学研究科 情報システム工学専攻 博士前期課程 進学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文では大規模時系列データストリームの高速予測手法である MODECAST を提案している.MODECAST は大規模時系列データストリームが与えられた時に,その中から潜在的なパターンの遷移を発見することで将来予測を行う.時間遅延座標系を用い過去情報と位相情報を付与できる時系列データの状態空間を利用し,時系列パターンを複数の動的モードで表現することで,より高精度かつ高速にデータ変化の表現とパターンの発見が可能になった.各種データセットで実験でも柔軟にパターンを発見し,最適かつリアルタイムな予測の実現ができており,データストリームの長さに依存することなく既存手法からの高速化が確認された.以上より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●大規模言語モデルを用いた要求仕様自動分類
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES2023)(2023/8/24)](ソフトウェア工学研究会)
 nagaoka

長岡 武志 君 (正会員)

2011年3月 大阪大学大学院情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻 博士後期課程 修了.
同年4月 東芝ソリューション株式会社 入社.
2023年4月 株式会社東芝に転籍,現在に至る.

 
[推薦理由] 本論文では,要求定義における大規模言語モデルを活用した要求仕様の分類手法を提案している.要求仕様の分類は,経験とノウハウを必要とし,一貫性の確保が課題である.また,深層学習による分類には,アノテーションデータの作成に多大なコストを要した.本研究では,生成系言語モデルを用いて少量の例示から推論を行う手法により,この課題の解決を試みた.結果として,手作業でのアノテーションデータ作成のコストを大幅に削減できる可能性を示した.この結果は,情報システム開発の現場においても高い実用性を持つ.以上の観点から,本研究は山下記念研究賞に相応しいものとして推薦する.
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●推薦の優先度に基づく識別子名一括変更支援
[2024-SE-216(2024/3/4)](ソフトウェア工学研究会)
 doi

土居 直樹 君 (学生会員)

2024年3月 東京工業大学情報理工学院情報工学系 卒業.
2024年4月 東京工業大学(現:東京科学大学)情報理工学院情報工学系情報工学コース 修士課程 入学
現在に至る.

 
[推薦理由] 本論文では,開発者が識別子の名前を変更する際に,同じ意図で命名されたものを一緒に変更する作業の負荷を減らす手法 RENAS-p を提案している.識別子間の関係性に基づき推論の連鎖を行う既存手法では,変更操作が適用できない識別子が推薦の連鎖を止めてしまうのに対して,RENAS-p では関係性と語彙の類似性を基に優先度を定義し,これにより推薦漏れを防ぐ.実験結果は,既存手法に比べて F 値が 0.1 以上向上し,この手法が関係性のみや類似性のみを考慮したものよりも優れていることを示している.本研究はソフトウェア開発における識別子名変更の課題解決に寄与し,その学術的価値と実用性から山下記念研究賞に相応しいものとして推薦する.
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●連合学習におけるバックドアの発動遅延によるステルスな学習撹乱
[2023-ARC-254(2023/8/04)](システム・アーキテクチャ研究会)
 tsutsui

筒井 政成 君 (正会員)

2022年3月 東京大学理学部情報科学科 卒業.
2024年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 修士課程 修了.
同年4月 ソニー・インタラクティブエンタテインメント 入社.

[推薦理由] 連合学習は,複数のエッジデバイスが各々のプライベートな訓練データを他者に開示することなく一つのモデルの学習を進める機械学習手法であり,近年その有用性は高まっている.不特定多数のクライアントが学習に関与するこの連合学習は,モデルが常に悪意あるクライアントによる攻撃リスクに晒されるため,防衛手法も多数研究されている.本研究では,まず既存の防衛手法を,より合理的な問題設定のもとで発展させる方式を提案している.その上で,新たな攻撃手法の提案を通じ,モデルの異常が攻撃直後に発生することを前提とした防衛手法が脆弱性をはらんでいることを明らかにした.これは連合学習におけるバックドア攻撃の防衛に新たな視点を導入する必要性を示したものであり,その意義は非常に大きい.よって山下記念研究賞にふさわしい候補としてここに推薦する.
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●Towards Automatic Verification of Concurrency Memory Bug Freeness of Linux Kernel Modules by Transpilation to PlusCal
[2023-OS-162(2024/2/19)](システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
 hattori

服部  穣 君 (学生会員)

2023年3月 東京大学理学部情報科学科 卒業
2023年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 入学

[推薦理由] 本研究は,Linux カーネルモジュールにおける並行実行時のメモリバグを検出する手法を提案している.従来の静的ツールでは並行実行と幅広いメモリバグへの対応を両立することが難しかったが,本研究ではカーネルモジュールのソースコードを形式仕様記述言語 PlusCal を経て TLA+ にトランスパイルしたうえで,ソースコードの本質部分のみの抽出,ポインタの配列化,展開したマクロの復元などの Linux カーネルの特徴を踏まえた手法を導入することにより,並行 use-after-free バグなどの幅広い種類のメモリバグ検出を可能にしている.形式検証によるメモリバグ検出手法を実システムに適用することは容易ではないが,本研究は Linux カーネルで特徴的に使われる手法を分析して現実的な適用手法を提案しており,将来性の期待できる山下記念研究賞に相応しい研究である.
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●Gain-Cell構造に基づく完全合成可能なスタンダードセルベースDRAM
 [DAS2023(2023/8/31)](システムとLSIの設計技術研究会)
 chin

陳  岱鋒 君 (学生会員)

2012年6月 台湾 国立中山大学情報理工学部 卒業.
2016年9月 台湾 国立中山大学大学院情報理工学研究科 修士課程 修了.
2016年10月〜2022年2月 MediaTek Inc. 台湾・新竹本社 計算と人工知能事業グループ 勤務.
2022年4月 名古屋大学大学院情報学研究科 博士後期課程 在籍中.

[推薦理由] 大量のメモリを使用する AI 処理などの計算では,メモリの直近で計算を行う Near-memory 計算や In-memory 計算が処理全体の消費エネルギーを削減する有力な計算方式の一つと考えられている.しかしながら,既存の高速メモリの中で最も集積度が高い DRAM は,ロジックプロセスとの互換性が低いため Near-memory 計算に適していない.本論文では,並列演算器の近傍に分散的にメモリを配置することを可能にするスタンダードセルベース DRAM の構成法を提案している.ビットセルには Gain-Cell DRAM と呼ばれるメモリ構造を使用する.Gain-Cell DRAM は完全ロジックプロセス互換であり,最低 2 個のトランジスタで構成できるため高い集積度のメモリを並列演算器の直近に分散配置可能である.また,メモリをスタンダードセル化することにより演算器とメモリを含む回路全体を完全合成可能(Fully-synthesizable)にできる.評価実験の結果,提案する構成法で設計したスタンダードセルベース DRAM は既存のスタンダードセルメモリと比べて大幅に面積効率を改善することを確認している.高集積なメモリ構成方法を提案している価値の高い論文であるため,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●計算品質を考慮した適者生存戦略に基づき近似計算の品質検証を高速化するファジングテスト手法
[2024-SLDM-205(2024/3/22)](システムとLSIの設計技術研究会)
 honda

本多 佑成 君 (正会員)

2022年3月 名古屋大学情報学部コンピュータ科学科 卒業.
2024年3月 名古屋大学大学院情報学研究科情報システム学専攻 博士前期課程 修了.
2024年4月 ルネサスエレクトロニクス株式会社入社,現在に至る.
主に,産業用の先端カスタムSoC開発業務に従事.

[推薦理由] 近似計算(Approximate Computing; AC)は計算方法に近似を導入する計算パラダイムであり,消費電力や回路面積を削減できる技術として特に有望視されている.本論文では,計算結果の品質(以下,計算品質)に対して目標値を付与し,その目標値を満足するという制約下で近似を適用する AC 回路設計手法に的を絞る.本論文では,AC 回路の品質検証を加速化するファジングテスト法を提案している.ファジングは「入力パタンの変異,テスト対象上での実行,および,変異対象のパタン選別」を繰り返すテスト手法であり,予期しない計算結果や異常動作を引き起こす入力パタンの発見に対して好適性を持つ.提案手法の要となる適者生存戦略では,変異前と変異後のパタンの集合から計算品質の低いパタン組を選別し,計算品質のより低いパタンを段階的に変異対象に取り込む.制約付きランダムテストおよび既存の品質検証手法との比較実験を実施したところ,提案手法が計算品質の低い結果を生み出す入力パタンをより効率的に発見できることを実験的に確認した.本論文で提案されている手法は比較実験からも効率的であり,価値の高い論文であるため,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●CUDA Fortran+MIG+UVMを用いたBLR行列QR分解の大規模高速化
[2023-HPC-190(2023/8/3)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
 ohshima

大島 聡史 君 (正会員)

2004年3月 電気通信大学電気通信学部情報工学科 卒業.
2006年3月 電気通信大学情報システム学研究科 情報ネットワーク学専攻 博士前期課程 修了.
2009年3月 電気通信大学情報システム学研究科 情報ネットワーク学専攻 博士後期課程 修了.
2009年4月 電気通信大学情報システム学研究科 博士研究員(産学官連携研究員).
2009年10月 東京大学 情報基盤センター スーパーコンピューティング研究部門 助教.
2017年4月 九州大学 情報基盤研究開発センター 学際計算科学研究部門 助教.
2019年7月 名古屋大学 情報基盤センター 大規模計算支援環境研究部門 准教授.
2022年10月 九州大学 情報基盤研究開発センター 先端計算科学研究部門 准教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究では,近似行列の一種であるブロック低ランク(Block Low-Rank, BLR)行列に対する QR 分解(BLR-QR)において GPU を用いた高速な BLR-QR の実現を目指し,Multi-Instance GPU(MIG)を用いた BLR-QR の高速化を実現した.本研究は,CUDA Fortran と MIG と Unified Virtual Memory(UVM)を用いた実装を行い,その性能評価を行っている.性能評価の結果,GPU に適しない小規模な GPU カーネルでも MIG により高性能化されること,および,UVM を使うことで GPU に収まらないメモリサイズでも容易に実行可能であることを示した.以上から,提案実装方式は近年の GPU 環境において有用な手法と認められ,山下記念研究賞に相応しい研究成果であると評価できる.
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●倍精度指数関数の高速な完全精度実装
[2023-HPC-192(2023/12/6)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究)
 koizumi

小泉  透 君 (正会員)

2016年3月 東京大学理学部化学科 卒業.
2018年3月 東京大学工学部電子情報工学科 卒業.
2020年4月~2023年3月 日本学術振興会特別研究員(DC1).
2023年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 博士課程 修了.博士(情報理工学).
2023年4月より,名古屋工業大学工学部情報工学科 助教.
現在に至る.

[推薦理由] 浮動小数点数を入力とする数学関数において,数学的な値を丸めた値を常に返すことを完全精度と呼ぶ.本研究では,倍精度指数関数について,最近接丸めに対する完全精度を達成する高速なソフトウェア実装法を提案している.提案手法は,Skylake マイクロアーキテクチャにおいてレイテンシが 50 サイクルと高速であり,テーブルサイズは 1.5 KiB と低フットプリントである.さらにテーブルを共有し,カバー率が 99.75%,レイテンシが 34 サイクルの fast path 実装を提案した.このことで,最大誤差が 1.0 ULP未満の既存のいかなる実装よりも高速であることを示した.以上から,提案実装は浮動小数点数演算における有用な実装方式であると認められ,山下記念研究賞に相応しい研究成果であると評価できる.
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●A Sufficient Condition of Logically Constrained Term Rewrite Systems for Decidability of All-Path Reachability Problems with Constant Destinations
[2023-PRO-146(2023/10/31)](プログラミング研究会)
 kojima

小嶋 美咲 君 (正会員)

2020年 名古屋大学工学部電気電子・情報工学科 卒業
2022年 名古屋大学大学院情報学研究科情報システム学専攻 博士前期課程 修了
2024年 名古屋大学大学院情報学研究科情報システム学専攻 博士後期課程 短縮修了
2024年より 日本学術振興会特別研究員(PD)

[推薦理由] 本論文は,拡張容易性の観点からプログラム検証への応用が注目されている論理制約つき項書換え系(LCTRS)に対する全パス到達可能性問題(APR 問題)についての研究報告である.APR 問題は,状態遷移系において,与えられた状態から停止するまでに必ず特定の状態を経るかという問題であり,LCTRS によって表現された状態遷移系の APR 問題を解くことは並行プログラムにおいて実行時エラーが存在しないこと判定するためにも有効である.本研究では,的確なアプローチによって APR 問題が決定可能となる LCTRS の特徴づけが実現されている.具体的には,APR 問題に対する証明木や反証木を循環証明体系によって形式化したうえで,反証木の正当性を示すためにナローイングとよばれる手続きを導入し,その手続きが停止する十分条件を提示している.本研究成果は応用範囲の広いプログラム検証技術の基礎的な研究として高く評価することできるため,山下記念研究賞に相応しいと判断し,ここに推薦する.
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●輪番割当6分の5予想の解決
[2024-AL-196(2024/1/20)](アルゴリズム研究会)
 kawamura

河村 彰星 君 (正会員)

2011年6月 トロント大学計算機科学科 博士課程 修了,Ph.D.
東京大学情報理工学系研究科,同総合文化研究科,九州大学システム情報科学研究院を経て,現在京都大学数理解析研究所准教授.
計算論,アルゴリズム論,計算機数学の研究に従事する.
情報処理学会,日本数学会,電子情報通信学会,日本図学会,欧洲理論計算機科学会(EATCS)会員.

[推薦理由] 保守・監督・警備・補給など恒常的な仕事を複数,それぞれ必要な頻度で行うスケジュールを作成する「輪番割当」は,実時間システムにおける最も基本的な問題の一つである.当該論文では,この問題に解が存在するための,仕事の量(密度)に関する最良の十分条件が示された.これは30年以上にわたり未解決であった「6 分の 5 予想」に決着をつける成果であり,計算機を援用した証明手法も新たな発想に基づく興味深いものである.よって山下記念研究賞候補として推薦する.
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●DDSとSOME/IPの協調フレームワーク
[2024-EMB-65(2024/3/22)](組込みシステム研究会)
 iwagami

岩上 竜大 君 (学生会員)

2024年3月 埼玉大学工学部情報工学科 卒業
2024年4月 埼玉大学大学院理工学研究科 博士前期課程 数理電子情報専攻 入学
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,ROS(Robot Operating System)2 プラットフォームと AUTOSAR AP プラットフォーム間での連携を目的とした DDS と SOME/IP の協調フレームワークを提案している.提案フレームワークは DDS と SOME/IP の通信プロトコルの違いを解消し,双方通信可能とする変換手法を実現している.さらに,提案フレームワークの DDS-SOME/IP 間の変換レイテンシは通信時間に対して十分に小さく,実用可能なレベルである.本研究は,自動運転分野の開発における標準である AUTOSAR AP 及び,研究における標準である ROS 2 の研究成果の相互利用を可能にし,学術だけでなく,実用面でも高く評価でき,山下記念研究賞に値する特に優れた研究発表であると判断しここに推薦する.
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●魔法状態評価の大規模化に向けた効率的アルゴリズム
[2023-QS-10(2023/10/27)](量子ソフトウェア研究会)
 hamaguchi

浜口 広樹 君 (学生会員)

2024年3月 東京大学工学部計数工学科 卒業.
2024年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 誤り耐性量子計算においては,万能量子計算を可能たらしめる「魔法状態」の存在が量子超越の達成には不可欠であるが,その定量的評価には,超指数関数的な計算量が必要とされている.本研究では,評価アルゴリズムの時空間計算量に関する抜本的な改善を行い,従来法では 86 ペタバイトのメモリを要するとされていた計算すら可能にすることを示した.本成果は,誤り耐性量子計算に対して極めて重大な進展をもたらすと考えられるため,山下記念研究賞に推薦する.
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情報環境領域

●NWDAFに着目した分散モバイルコアネットワークに関する検討
[2023-DPS-195(2023/5/19)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
 kurata

倉田 真之 君 (正会員)

2019年 九州工業大学情報工学部 卒業.
2021年 九州工業大学院情報工学府 修士課程 修了.
2021年~2022年 KDDI株式会社.
2022年より株式会社KDDI総合研究所. 6Gモバイルネットワークに関する研究に従事.

[推薦理由] エッジサイト・セントラルサイトから成る分散コアネットワークアーキテクチャにおいて,NWDAF によるシグナリング数やそのメッセージサイズを低減するための方式として,NF を同一プロセス空間上で組み合わせるコンポーネント化,Federated Learning を活用した選択的なモデル統合手法を提案している.また,後者の提案方式のプロトタイプ評価を通して,サイト間のシグナリング数とそのメッセージサイズを減らし,帯域使用の効率化が実現できることを確認した.モバイルネットワークのパフォーマンス低下という重要な課題に取り組んだ有用な研究であり,実用面において重要な成果であると考えられるため,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●集計処理をもとにした関係データベースとグラフデータベースの性能評価 
[2024-DPS-198(2024/3/18)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
 tamura

田村 大樹 君 (正会員)

2021年3月 東京電機大学理工学部理工学科情報システムデザイン学系 卒業.
2023年3月 東京電機大学大学院理工学研究科情報学専攻 修了.
2023年4月 三菱電機株式会社 入社.
現在,三菱電機株式会社情報技術総合研究所にて,データ連携技術等の研究開発に従事.

[推薦理由] NoSQL データベースにおいて,データモデルや操作に使用する言語が異なるため,関係データベースとの処理性能の比較が難しいという課題がある.本研究では,関係データベース用のベンチマークツールである TPC-H を利用し,その処理時間をもとに関係データベースとグラフデータベースの性能評価を行った.具体的には,TPC-H が生成する関係データベース向けのデータおよびクエリを Neo4j に対応した形式に変換することで,同じユースケースで評価できるようにした.性能評価の結果,すべてのクエリの平均処理時間では PostgreSQL が最も短く,次いでMySQL,Neo4j の順に処理時間が長くなることが分かった.関係データベースとグラフデータベース間での比較評価が可能になるという重要な成果を与えた有用な研究であり,実用面において重要な成果であると考えられるため,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●Lyric App Framework: インタラクティブな歌詞駆動型視覚表現の開発用フレームワーク
[インタラクション2024(2024/3/6)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
 kato

加藤  淳 君 (正会員)

2014年 東京大学大学院情報理工学系研究科 博士後期課程 修了,博士(情報理工学)
2014年 国立研究開発法人 産業技術総合研究所研究員
2018年 同 主任研究員,現在に至る
2018年 アーチ株式会社技術顧問(兼務,現在に至る)
2024年 Universite Paris-Saclay Visiting Scientist(兼務,現在に至る)

[推薦理由] 本研究は,音楽に合わせてタイミングよく歌詞が動くリリックビデオにインタラクティブな要素を取り入れた表現形式「リリックアプリ」を新たに提案している.リリックアプリの開発には,時間精度を要する演出のプログラミングなどの技術課題があり,これを解決するフレームワークを実現し,一般公開した.さらに,2 年にわたり,リリックアプリを開発するプログラミングコンテストを大規模イベントの一環で開催した結果集まった 52 作品を分析し,リリックアプリのデザイン空間を探索している.本研究が提案する新たなメディア表現と,技術的新規性のあるフレームワークのみならず,実証評価を通じてその表現力と可能性を示すという先駆的なアプローチに顕著な学術的価値が認められる
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●人間と食物の意見の相違がその味に及ぼす影響:対話可能な可食ロボットを用いた実験的探求
[2024-HCI-207(2024/3/11)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
 kume

久米 佑弥 君 (学生会員)

2024年3月 電気通信大学情報理工学域Ⅱ類 卒業
2024年4月 電気通信大学情報理工学研究科機械知能システム学専攻 修士課程 入学

[推薦理由] 本研究は,対話可能な可食ロボットを用いて,人と食物の意見の相違が味覚に与える影響を調査するという斬新なアプローチを採用している.特に,食物が意見を持つという設定を取り入れ,意見に応じて応答を変える可食ロボットを実装している.さらに,参加者 35 名によるユーザテストの結果,意見の相違が味覚に影響を与える可能性を示している.このように,本研究は味覚研究の従来の枠組みを大きく超え,食の可能性を拡げることに大きく貢献しているため,山下記念研究賞に相応しい.
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●ビジネスゲームを利用した情報システム教育の設計と実践報告
[2023-IS-165(2023/8/28)](情報システムと社会環境研究会)
 matsuzawa

松澤 芳昭 君 (正会員)

2002年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 修士課程 修了.
2007年 同後期博士課程 単位取得退学,博士(政策・メディア).
静岡大学情報学部助教,講師を経て,2017年より青山学院大学社会情報学部准教授.
情報システム学を応用したユーザ中心のソフトウエア設計と開発,情報教育,学習科学の研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,ビジネスゲームを利用した情報システム教育科目の開発および実践を報告している.本科目は,人間活動を含む情報システムの分析・設計ができる人材の育成を目的として毎年改善を重ねており,本論文では提案したビジネスゲームの実践により「業務の効率性・正確性の向上」,「ゲーム成果が経営の意思決定スピードアップ」,「設計と実装のトレーサビリティ明確化」,「受講生が業務改善を体感可能」といった効果を実証している.現実の情報システム開発に役立つ教育で,単なる提案ではなく実践かつ毎年改善しており,「使える」情報システムを研究対象としている当研究会にとって有用性が高い研究として山下記念賞に値すると判断した.
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●マスク言語モデルによる日本語文章の自動強調付与
[2023-IFAT-153(2023/12/20)](情報基礎とアクセス技術研究会)
 zhuo

Zhuo Binggang 君 (学生会員)

2019年 中国電子科技大学中山学院ソフトウェア工学専攻 卒業.
2023年 鳥取大学持続性社会創生科学研究科工学専攻 博士前期課程 修了.
同年,鳥取大学工学研究科工学専攻 博士後期課程 進学.

[推薦理由] 本研究は,事前学習言語モデル RoBERTa と CRF を組み合わせたアーキテクチャーに,文章のタイトル情報を取り入れて日本語文章の自動強調付与を行う手法を提案している.評価実験は,一サイト上の 300 文章程度と規模は小さいものの,ベースラインとの比較や人手評価との比較など多角的な評価を行うよう設計されている.提案手法に対する詳細な検証を行っている点も評価できる.日本語文章の要点を素早く把握することを可能にする研究自体の重要性と,ブラウザプラグイン実装などの具体的な活用に向けた評価が期待できるなど,研究の波及効果が高いと考えられることから,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●VR会議における他者との対面量に着目した会議の質評価の試み
  [マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム DICOMO2023(2023/7/7)](コラボレーションとネットワークサービス研究会)
 watarai

渡会 隆哉 君 (学生会員)

2023年3月 公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科 卒業.
2023年4月 公立はこだて未来大学システム情報科学研究科知能情報科学領域 博士前期課程 進学.
現在在学中.

[推薦理由] 本論文は,VR 会議においてお互いの対面量だけで,他の参加者の参加意欲,または社会的手抜きの認知を推定することを目指し,会議の質と非言語行動の関連を分析している.2種類の環境に実験を通じて環境が非言語行動に与える影響を調査した上で,参加者ごとの対面量を見た/見られた時間としてデータ化し,社会的手抜きの認知,グループごとの見られていた時間,グループの最終決定の質の関係を分析している.結果,壁提示環境においては見た/見られたという非言語行動は,社会的手抜きの認知,グループの特徴,および最終決定の質と相関が見られ,会議において重要な要素となる可能性を示唆している.この成果は,VR やメタバースが普及しつつある現在において,個人間のみならずビジネスシーンなどにおける VR 活用の活性化に寄与する重要な研究であるため,推薦する.
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●画像認識を用いた小型農業用ロボット向け作物列追従システムの提案
[2023-MBL-108(2023/9/25)](モバイルコンピューティングと新社会システム研究会)
 kitade

北出 卓也 君 (正会員)

2013年 慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 修士課程 修了
2013年 株式会社NTTドコモ 入社
2023年 慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 博士課程 入学
NTTドコモにて画像認識及びロボティクス技術の,農業やスマートシティの領域への社会実装業務に従事,現在に至る.
 

[推薦理由] 本研究では,画像認識を用いた農業用ロボットの制御システムを開発し,実際の農地における実験で cm オーダーの制御を RTK-GNSS 無しで実現している.農業用ロボットやトラクタにおいては RTK-GNSS や施設側のマーカー設置等による cm オーダーでの制御が一般的である中,本研究では作物列に対する画像認識をリアルタイムに行い走行位置を補正するという手法により同等の精度で実現することで,より広範囲の農場に対するロボット応用が期待される.提案手法を実際のロボットに適用実装するとともに農地での実証を進めており,モバイルコンピューティングの社会応用を研究対象としている当研究会にとって有用性が高い研究事例であることから,山下記念研究賞に推薦する.
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●Ultra Wide Bandを用いた高精度位置測位システムの一検討
[2024-MBL-110 (2024/2/29)](モバイルコンピューティングと新社会システム研究会)
 fujiwara

藤原 拓也 君 (学生会員)

2023年3月 大阪大学工学部電子情報工学科 卒業
2023年4月 大阪大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻 博士前期課程 入学
現在に至る

[推薦理由] 本論文は,XR への応用を目的とした Ultra Wide Band (UWB) を用いた高精度位置測位システムを提案している.UWB はインパルス応答 (CIR) を解析することで屋内における高精度位置測位が期待される一方,非見通し環境においては電波の減衰に起因して CIR から直接波をうまく検知することができず,位置測位精度が低下するという課題があげられる.本研究の工夫点は,CIR を時間的にずらしてコンピュータへ伝送し独自のアルゴリズム・測位方式を通じて位置測位を行っている点である.評価実験では,電波暗室内において LOS および NLOS 環境でそれぞれおよそ 1cm 以内の中央誤差を達成しており,XR アプリケーションが満たすべき精度を達成していることから,今後の低コストな XR 実現に向けて大きく貢献しているといえる.以上の理由から,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●プロンプト・チューニングは大規模言語モデルの安全性を高めるか?
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2023)(2023/11/2)](コンピュータセキュリティ研究会)
 nakai

中井 綱人 君 (正会員)

2013年3月 立命館大学理工学部電子情報工学科 卒業.
2015年3月 立命館大学大学院理工学研究科電子システム専攻 博士前期課程 修了.(博士(工学)(立命館大学),2022年)
2015年4月 三菱電機株式会社 入社.以来,ハードウェア,組込み機器,制御システム,機械学習システムのセキュリティ技術に関する研究開発に従事.

[推薦理由] 大規模言語モデルに対するファインチューニング時のデータ漏洩リスクを実験により評価した研究であり,新規性・信頼性が共に高い論文である.今後,同分野での研究の参考となる結果が得られており,攻撃や緩和策を検討する上で有用性が高い.以上のことから,本論文を論文誌に推薦したい.
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●入力時の日本語と英語の差異がChatGPTで生成するコードの安全性に与える影響の考察
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2023)(2023/11/2)](コンピュータセキュリティ研究会)
 yamagishi

山岸  伶 君 (正会員)

2017年3月 電気通信大学情報理工学部総合情報学科 卒業.
2019年3月 電気通信大学大学院 修士課程 修了.
2019年4月 株式会社日立製作所 入社.
2024年4月 早稲田大学大学院基幹理工学研究科 博士後期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] ChatGPT を活用して生成したコードの安全性について,入力時の日本語と英語の差異というユニークな着目点から分析しており,新規性が高い.分析結果に基づいた研究者・開発者に向けた提言も含まれており有益な研究である.以上のことから,本論文を論文誌に推薦したい.
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●遠隔車両制御システムのためのリアルタイムシミュレータ
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム DICOMO2023(2023/7/6)](高度交通システムとスマートコミュニティ)
 sasaki

佐々木健吾 君 (正会員)

2010年 東京大学大学院 学際情報学府 修士課程 卒業.
2010年~現在 豊田中央研究所 入社.
2019年 東京大学大学院学際情報学府 博士課程 卒業.
自動車を考慮した通信・ネットワークに関する研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,車両制御シミュレータ CARLA,交通シミュレータ SUMO,ネットワークシミュレータ OMNeT++ を連携させるコネクティッドサービスのリアルタイムシミュレータを提案し,マルチキャリア環境による遠隔車両制御の評価に適用してその有効性を明らかとしている.コネクテッドカーによる遠隔車両制御や協調走行等の技術は,今日重要性を増しているが,その技術開発に当たっては,通信と車両挙動を含めた高性能なシミュレータが必要である.この観点から,本論文の成果は当該分野における技術開発を加速させる点で寄与が大きく,山下記念研究賞受賞に相応しい.
●敵対的⽣成モデルに基づく活動⼈⼝の波形描画を⽤いた混雑寿命予報
[2023-UBI-80(2023/11/21)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
 annno

安納 爽響 君 (学生会員)

2020年3月 東京工業大学情報理工学院情報工学系 卒業.
2022年3月 東京工業大学情報理工学院情報工学系 修士課程 修了.
2022年4月より 東京工業大学情報理工学院情報工学系 博士後期課程 在学中.
2022年4月より 日本学術振興会特別研究員(DC1).
現在に至る.

[推薦理由] 本論⽂は,イベント時の混雑の発⽣から消滅までの予報を⽬的とし,群衆の⼈⼝密度推移を予測する⼿法を提案している.従来の⼿法では,状態遷移モデルを⽤いて増減パターンを予測していたが,実際の⼈数変化量を把握するのが難しいという課題があった.提案⼿法では,敵対的⽣成ネットワークを⽤いて,状態遷移の代わりに概算的な⼈数の変化量や推移傾向が反映される⼈⼝密度推移の形状を直接モデル化するアプローチによって予測精度を向上させた.実データおよび⼈⼯データを⽤いた評価実験において,既存⼿法よりも⼩さな誤差で混雑を予測可能であることを⽰している.この⼿法は,イベント管理や安全対策において重要な貢献を果たすと考えられ,ユビキタスコンピューティング分野にも⼤きく寄与する.以上の理由により,本論⽂を⼭下記念研究賞に推薦する.
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●GNSS衛星ごとの信号情報に対する点群ニューラルネットワークを⽤いたUVインデックス推定
[2024-UBI-81(2024/3/1)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
 atsumi

厚⾒  昴 君 (学生会員)

2023年3月 東京大学工学部電気電子工学科 卒業.
2023年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論⽂は,GNSS 衛星の信号情報を活⽤し,個⼈の紫外線曝露量を⾼精度に推定する⼿法を提案している.従来の⼿法では衛星の位置情報を統計値で代表していたため,詳細な信号情報や位置関係が失われる課題があったが,本研究では GNSS 衛星を 3 次元点群と⾒なし,点群⽤に開発された深層学習の⼿法を応⽤することで,衛星単位の情報と衛星の空間的関係性を考慮した紫外線量推定を実現した.紫外線曝露量の正確な推定は,健康管理や環境モニタリングにおいて重要であり,本研究はその実現に⼤きく貢献するものである.これにより,ユビキタスコンピューティング分野にも⼤きな影響を与えることが期待される.以上の理由により,本論⽂を⼭下記念研究賞に推薦する
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●突発的なWebトラフィックの増減に適応するfuzzy entropyを用いたオートスケーリングシステム
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム (DICOMO2023)(2023/7/6)](インターネットと運用技術研究会)
 yokoyama

横山 尚弥 君 (正会員)

2014年 立教大学理学部 卒業
2023年9月 北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科先端科学技術専攻 博士前期課程 修了
2023年10月 北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科先端科学技術専攻 博士後期課程 在籍

[推薦理由] 本研究は,クラウド上で予測困難なバーストトラフィックを発生しうるサービスに対し,Fuzzy Entropy を利用して必要最低限のウィンドウサイズを用いることで,バーストトラフィックに対応可能なオートスケーリングの手法を提案しその有効性を検証している.提案手法は,少ないパラメータによる負荷予測とリソース制御の最適化を実現しており,定性的かつ定量的評価によって既存手法と比較した提案手法の優位性を示しており,優れた研究成果であると言える.以上のことから,山下記念研究賞候補として推薦する.
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●プライバシーポリシーに使用される技術用語および個人情報保護法に対するユーザの理解度の調査
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2023)(2023/11/1)](セキュリティ心理学とトラスト研究会)
 kanamori

金森 祥子 君 (正会員)

1984年3月 青山学院大学文学部英米文学科 卒業
1984年4月 株式会社富士通京葉システムエンジニアリング 入社
1999年9月 総務省通信総合研究所 情報通信部門 画像グループ
2004年7月~現在 国立研究開発法人情報通信研究機構 セキュリティ基盤研究室 主任研究技術員
2023年9月~現在 国立研究開発法人情報通信研究機構 ダイバーシティ推進室兼務

[推薦理由] 本論文は,プライバシーポリシーにおける技術用語について,海外の先行研究と国内との比較を通じて,ユーザの誤解に関する異文化間研究の重要性を示すとともに,サービス事業者や専門家は国や文化によって異なる支援方法を実施する必要があることを示したもの.その知見はもちろん,調査デザインや分析手法,分析結果の議論についても高いレベルでまとめられており,即ち成果・手法ともに高く評価されるものである.よって本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●ユーザブルセキュリティ研究に向けた情報セキュリティ・プライバシーに関する問題セットの構築
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム (DICOMO2023)(2023/7/7)](セキュリティ心理学とトラスト研究会)
 nishikawa

吉川  諒 君 (正会員)

2022年3月 東京大学工学部電気電子工学科 卒業.
2024年3月 東京大学大学院学際情報学府 修了.

[推薦理由] 本論文は,セキュリティ・プライバシー研究に有益な問題集を作ることを目的とした研究であり,ユーザ評価も 4 か国で行うなど,多角的な検討を行っている.問題セットが(論文には URL はないものの)発表中で公開されていること,また,検討の多角的な観点を踏まえると,結果についても信頼性が十分にあると考えられる.よって本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●様々な産地市場に転用可能な魚種の自動判別モデル
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム (DICOMO2023)(2023/7/6)](コンシューマ・デバイス&システム研究会)
 hasegawa

長谷川達人 君 (正会員)

2009年3月 石川工業高等専門学校電子情報工学科 卒業.
2011年3月 金沢大学工学部情報システム工学科 卒業.
2011年4月 株式会社富士通北陸システムズ システムエンジニア.
2014年4月 東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科 助手.
2015年9月 金沢大学大学院自然科学研究科 博士後期課程 修了 博士(工学).
2017年4月 福井大学工学部電気電子情報工学科 講師.
2020年12月 福井大学学術研究院工学系部門 准教授.

[推薦理由] 持続可能な漁業に向けて,漁獲情報の電子データ化が注目されている.本研究では,季節や場所によって異なる多くの魚種を扱うというタスクの複雑さや,大規模な漁獲物の公開データセットが不足しているという課題に対し,多数の似て非なる魚種識別のための汎用的な事前学習済み CNN モデルを開発しその効果を実証している.コンシューマシステムにも応用可能な効果的な研究開発事例として CDS 研究会のテーマと合致し,当研究会会員の評価も高かったため当該論文を推薦する.
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●3Dプリンターで飲料中に雲を造形するアート作品の制作
[2023-DCC-34(2023/6/8)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
 inomata

INOMATA AKI  君 (正会員)

2008年3月 東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻 修了
2013年4月より現在 早稲田大学 嘱託研究員
2021年4月より現在 デジタルハリウッド大学大学院 特任准教授

[推薦理由] 本研究は,飲料中に雲を造形するアート作品を制作するための手法を提案している.現実の空の写真を元に,飲むことができる粘性のある液体中に,3D プリンタで雲となる白い液体をシリンジから射出する技術を確立しており,液体中に安定的に造形を維持できることが特徴である.本発表は,システムの構成方法および制作における試行錯誤による課題解決の過程について述べられ,新たなデジタルコンテンツ制作の発展に寄与するものと高く評価された.
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●微分可能レンダリングを用いた所望の集光模様を持つゼリーの設計手法
[2024-DCC-36(2024/1/23)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
 inokoshi

猪腰 大樹 君 (学生会員)

2024年3月 芝浦工業大学工学部情報工学科 卒業.
2024年4月 芝浦工業大学大学院理工学研究科電気電子情報工学専攻 修士課程 入学.

[推薦理由] 本研究は,光を当てると集光模様が生じるゼリーを作成するための手法を提案している.「五感の芸術」称される和菓子が味に加えてその見た目が重要であるように,見た目が涼し気な透明な菓子であるゼリーに光があたったときに現れる集光模様を,微分可能レンダリングを用いてゼリー形状を計算機でデザインしている.本発表では,実際に作成したゼリーの展示も行い,その有効性が示され,特に食メディアにおけるコンテンツ制作の発展に寄与するものと高く評価された.
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●Digital Platform for improving Older Adults' Quality of Life in Today's Super-Aging Society
[2023-ASD-27(2023/9/26)](高齢社会デザイン)
 nameki

行木 陽子 君 (正会員)

March 1985 Bachelor of Arts
1985–2021 Distinguished Engineer, IBM Japan
March 2003 Master of Engineering
2021–Present Specially Appointed Professor, Chuo University
March 2024 Ph.D. in Life Sciences

 

[推薦理由] 高齢者の QoL 向上のためのデジタルプラットフォーム構築を進めており,高齢者一人ひとりに対する実践的な研究を推進している.高齢者の状態像の把握や,それをどのように活用するのかを VR を含めた多様なインタフェースデザインを活用して多角的に検証し,高齢者がデジタルサービスを利用することへの動機づけをどのように促すかを考察している.本研究で積み上げてきた成果は,今後の高齢者を対象とした研究を推進する上で重要な知見であり,波及効果も大きいと考えられるため山下記念研究賞の候補として推薦する.
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メディア知能情報

●未知の知識に対する事前学習済み言語モデルが持つ推論能力の調査
[2023-NL-257(2023/9/1)](自然言語処理研究会)
 sakai

坂井 優介 君 (学生会員)

2022年3月 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 博士前期課程 修了.
2022年4月 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 博士後期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 当該研究発表は事前学習済み言語モデルの記憶能力と推論能力を切り分けて評価する方法と,そのためのデータ構築方法に関するものである.未知の事象に対して事前学習済み言語モデルが行う推論の性能は実用上非常に重要な課題であり,そこに注目し効果的な評価手法を提案していることが高く評価できる.また,知識グラフ補完を対象とした多角的な実験および分析を通じて事前学習済み言語モデルの推論能力について有用な知見を提供しており,他のタスクへの応用も期待される重要な成果である.山下記念研究賞の候補として推薦するにふさわしいものと考える.
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●多様な選好を持つ荷主からなる混載輸送サービスにおけるダイナミックプライシングによる貨物量変動の抑制
[2024-ICS-212(2024/2/29)](知能システム研究会)
 kondo

近藤  愛 君 (正会員)

2016年 津田塾大学学芸学部数学科 卒業.
2018年 津田塾大学大学院理学研究科 修士課程 修了.
同年 沖電気工業株式会社 入社.
マルチエージェントシステム,数理最適化の研究に従事.

[推薦理由] 我が国においてもその対策が強く求められる状況にある物流問題の1つ,混載輸送サービスにおける貨物量変動の抑制への変動価格の適用について扱っており実社会での重要性の高い問題に,その現場や現場の知見も考慮して取り組んでいる研究である.特に本研究では,荷主の選好について5種類の異なる分布を想定するなど実社会の状況を考慮したエージェントシミュレーションを行えており,それによって,貨物量変動を抑制と車両コストの低減などが効果的に行える場面が広い範囲に及ぶ可能性のあることを指摘する印象的な内容を提示している点で興味深い.以上より,本賞を受賞するにふさわしい研究発表であると考えられる.
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●View Birdification:On-Ground Pedestrian Movement Estimation and Prediction from Ego-centric In-Crowd Views
[2023-CVIM-234(2023/5/18)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 nishimura

西村 真衣 君 (正会員)

2013年3月 京都大学工学部電気電子工学科 卒業.
2015年3月 京都大学大学院情報学研究科 博士前期課程 修了.
2015年4月~2017年10月 日本電信電話株式会社 勤務.
2017年11月~2019年3月 株式会社フィックスターズ 勤務.
2019年4月 オムロンサイニックエックス株式会社 勤務,現在に至る.
2023年3月 京都大学大学院情報各研究科 博士後期課程 修了.博士(情報学)
情報処理学会,IEEE各会員.

[推薦理由] 本研究は混雑環境下における自己位置推定及び周辺環境における人物の動き予測を実現する空間認識手法の創出を主題とし,静的な特徴点に一切依存せず,観測主体の周辺に存在する動的な歩行者を主たる特徴点として用いる方法論を新たに着想し,その基礎理論の導出及び評価基盤の構築を行ったものであり,コンピュータビジョン分野の研究として高く評価できる.以上により,山下記念研究賞に相応しい研究成果として推薦する.
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●カゲを考慮した低ランク性に基づく多波長・多方向光源下の相互反射除去
[2024-CVIM-237(2024/3/4)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 taniguchi

谷口 暢章 君 (正会員)

2022年3月 九州工業大学情報工学部知能情報工学科 卒業.
2024年3月 九州工業大学大学院情報工学府情報創成工学専攻 修士課程 修了.
2024年4月 パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 多波長・多方向光源下の画像は,光源の色と方向の両方に依存する物体の見えを捉えることができるため,画像の理解・認識・生成において重要である.本論文では,多波長・多方向光源下のカラー画像群を対象として,画像群を画素,光源色・カメラバンド,光源方向に関する 3 次元データとして表現したときの低ランク性,ならびに,陰と影の性質に基づいて,多変量解析の枠組みで,画像を直接反射成分と相互反射成分に分解する手法を提案している.相互反射除去が明るさ解析の重要な要素技術であることに加えて,多波長・多方向光源下画像の相互反射除去という独自の問題に対して,物理モデルに基づく新たなアルゴリズムを提案していることから,コンピュータビジョン分野の研究として高く評価できる.よって,本研究を山下記念研究賞候補として推薦する.
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●オパールのビジュアルシミュレーション—焼結の再現と回折方向の効率的な探索—
[2024-CG-193(2024/3/19)](コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会)
 yokota

横田 壮真 君 (学生会員)

2022年3月 慶應義塾大学理工学部 卒業.
2023年9月 慶應義塾大学大学院理工学研究科 前期博士課程 修了.
2023年9月 慶應義塾大学大学院理工学研究科 後期博士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,オパールのビジュアルシミュレーション手法の新規性と有用性を高く評価できる研究です.加法的重み付きボロノイ図とベルヌーイパーコレーションモデルを用い,物理的に尤もらしいオパールの内部構造を再現し,Ewald の作図により回折光の計算を効率化しています.従来手法に比べ,多様な構造色を再現できる優位性があり,計算効率も向上しています.著者の先行研究からさらに進歩し,発表後も国際会議での発表実もあり,山下記念研究賞にふさわしい成果です.宝石デザインやビジュアルシミュレーション分野における新たな標準となる可能性があります.
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●大学入学共通テスト「情報Ⅰ」における「データの活用」の分野に則した授業の検討
[SSS2023(2023/8/19)](コンピュータと教育研究会)
 inagaki

稲垣 俊介 君 (正会員)

2007年 東京都立高等学校情報科 教諭(2016年より情報科主任教諭).
2022年 東北大学大学院情報科学研究科 博士後期課程 修了,博士(情報科学).
2024年 山梨大学大学院総合研究部教育学域教育学系(附属教育実践総合センター) 准教授.
本会では,会誌「情報処理」編集委員会,コンピュータと教育研究運営委員会,情報入試委員会,情報科教員・研修委員会,などを務める.

[推薦理由] 本研究は,高校共通教科「情報I」の「データの活用」分野を対象とした授業カリキュラム及びその内容について,授業実践を通した評価と合わせて検討と提案を行ったものである.評価においては大学入学共通テストの「情報」試作問題の「データの活用」分野の解答結果と,学習者が授業の課題として提出するリフレクションを用いて定量的な評価を行っている.大学のみならず初等中等教育においてもデータサイエンスが重要な学習トピックと位置づけられてきた昨今,情報の「データと活用」に対応した,演習活動を中心とする有用性の高い授業モデルを提案した本研究の意義は大きく,発表を行ったシンポジウムにおいても参加者から高い評価を得ており,本研究会から推薦する発表としてふさわしい内容であると評価した.
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●円グラフと帯グラフの量的把握の比較検討
[SSS2023(2023/8/20)](コンピュータと教育研究会)
 sumiya

隅谷 孝洋 君 (正会員)

1989年3月 広島大学大学院工学研究科情報工学専攻 博士課程前期 修了.
1989年4月 広島大学総合科学部 教務員.
1995年10月 広島大学総合科学部 助手.
2001年4月 広島大学情報メディア教育研究センター 助教授.
2021年4月 広島大学情報メディア教育研究センター 教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,比率を表す二つのグラフ表現である円グラフと帯グラフについて,その比率や大小関係など"読み取りやすさ"の特性について,約 800 名の被験者への調査結果の分析をもとに検証したものである.「円グラフは適切な表現方法ではない」など一見直感的に正しいと認識されているグラフの "読みやすさについて,その根拠に疑問を投げかけ客観的指標をもってその真偽を明らかにしようとするアプローチの独自性,大規模な調査データをもとにした分析と,その結果からアナログ時計の読み取り能力との関連性が示唆されるなどのユニークな考察で,参加者から高い評価を得た.
データ科学教育が重視される昨今の状況において,本研究は重要な気づきを与えるものであり,推薦にふさわしい内容であると判断した
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●物語の展開パターンの結合の特徴に基づく構造の自動生成-『ブラック・ジャック』新作に向けて
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2023)(2023/12/9)](人文科学とコンピュータ研究会)
 murai

村井  源 君 (正会員)

1999年 東京大学工学部計数工学科 卒業.
2007年 東京工業大学大学院社会理工学研究科 博士課程 修了.
2008年 東京工業大学大学院社会理工学研究科 助教.
2017年 公立はこだて未来大学 准教授.
2021年 公立はこだて未来大学 教授.
現在に至る.

[推薦理由] 従来の Computational Narratology ではジャンル単位での物語の構造の特徴抽出は可能であったが,特定作家の作品における物語構成の特徴である作風とは何かは科学的に明らかになっておらず,データとして処理することも困難であった.本研究では物語論及び情報学の手法を用いて,手塚治虫の『ブラック・ジャック』の物語構造をデータセットとして構造化し,その特徴的なパターンを統計的に抽出する手法を提案した点で新規性がある.また抽出された物語のパターンを用いて新しい物語構造を生成するアルゴリズムを提案した点も有意義であり,今後産業的な応用なども期待できる
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●歴史マイクロナレッジの提唱とHIMIKO(Historical Micro Knowledge and Ontology)システムの実装
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2023)(2023/12/9)](人文科学とコンピュータ研究会)
 ogawa

小川  潤 君 (正会員)

2019年3月 東京大学大学院人文社会系研究科・欧米系文化研究専攻 修士課程 修了
2019年4月 同博士課程 進学
2022年4月 ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター 特任研究員
2024年4月 国立情報学研究所 特任研究員
現在に至る.

[推薦理由] 推薦論文は,厳密な一次史料参照性に基づきつつ,歴史史料に記された出来事や状況といった詳細な意味内容を知識グラフとして構造化するための手法として「歴史マイクロナレッジ」を提唱するものである.また,史料インターフェイスを用いた実際のデータ構築を支援する HIMIKO エディタを開発することにより,情報科学が専門ではない歴史研究者によるデータ構築を容易にしている.従来,史料のデータ構造化という文脈においてはメタデータの記述が主であり,深い意味内容にまで踏み込んだデータ化に関しては十分な研究がなされてこなかった.推薦論文による「歴史マイクロナレッジ」という新たな方法論の確立と実践環境の整備は,史料の意味内容にまで踏み込んだ高度な検索や,知識グラフの推論を応用した内容分析の可能性を拓き,より「深い」データ駆動型歴史研究に資する研究であると評価できる
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●TextAlive App API: 「リリックアプリ」の提案とプログラミング・コンテストでの実証実験
[2023-MUS-138(2023/8/27)](音楽情報科学研究会)
 kato

加藤  淳 君 (正会員)

2014年 東京大学大学院情報理工学系研究科 博士後期課程 修了,博士(情報理工学)
2014年 国立研究開発法人 産業技術総合研究所研究員
2018年 同 主任研究員,現在に至る
2018年 アーチ株式会社技術顧問(兼務,現在に至る)
2024年 Universite Paris-Saclay Visiting Scientist(兼務,現在に至る)

[推薦理由] 本研究は,音楽再生と同期して歌詞が動く視覚表現をインタラクティブに楽しめる「リリックアプリ」という表現形式を新たに提案した.開発にはプログラマやミュージシャンへの技術的支援が不可欠であり,そのための API と Web ベースのフレームワークを公開した.創作文化イベントで開催したプログラミングコンテストでは 年間で 52 作品が集まり,詳細かつ多面的に質的評価を行った.ユーザとともに音楽情報科学の未来を切り拓くアプローチ,API の新設計など豊富な技術的知見,リリックビデオに次ぐ新たな表現形式の音楽産業への潜在的インパクト,いずれも特筆すべき成果であり,山下記念研究賞候補として推薦する
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●ChatGPT-EDSS: ChatGPT由来のContext Word Embeddingから学習される共感的対話音声合成モデル
[2023-SLP-147(2023/6/23)](音声言語情報処理研究会)
 saito

齋藤 佑樹 君 (正会員)

2018年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科 修士課程 修了.
2021年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科 博士課程 修了,博士(情報理工学).
2021年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科 特任助教.
2023年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科 助教.
2024年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科 講師.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,ChatGPT を活用した共感的対話音声合成の手法を提案している.対話相手に共感して韻律を適切に変える共感的対話音声合成において,提案法は,まず ChatGPT に対話履歴のテキストをプロンプトとして与え,各話者の発話に対して意図,感情,発話スタイルを表す つの文脈語を回答させる.次に,文脈語の埋め込みで対話音声合成モデルを条件付けして学習することで,ChatGPT 由来の文脈語で韻律を制御可能な対話音声合成を実現する.提案法は大規模言語モデルを活用した新たな対話音声合成パラダイムであり,音声言語情報処理研究全般に強く貢献するものである.以上の理由から,山下記念研究賞にふさわしい論文として本論文を推薦する
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●パラレルデータを用いた知識蒸留によるNeural Transducer型目的話者音声認識の性能改善の検討
[2024-SLP-151(2024/2/29)](音声言語情報処理研究会)
 moriya

森谷 崇史 君 (正会員)

2016年3月 東京工業大学大学院総合理工学研究科 修士課程 修了.
2016年4月 日本電信電話株式会社 入社.音声認識の研究に従事,現在に至る.
2023年3月 東京工業大学大学院工学院情報通信系 博士課程 修了,博士(工学).

[推薦理由] 本論文では,複数話者の音声が含まれる混合音から,事前に登録された目的話者の音声のみを認識する「目的話者音声認識」について取り組んでいる.目的話者音声認識モデル学習の従来手法は,複数の話者の音声を含む混合音が必要であるため,単一話者の音声を複数用意して重畳する混合音を用いるのが一般的である.提案手法では,目的話者を含む複数の音声を用いて生成した疑似混合音,目的話者の書き起こし,事前登録用の音声だけでなく,従来利用されてこなかった混合前の目的話者の音声も正解データとして学習に用いる.本論文はこの枠組みを知識蒸留として解釈・定式化し,実験によって統計的に有意な改善を達成したという点で音声認識研究に寄与するところが大きい.以上の理由から,山下記念研究賞にふさわしい論文として本論文を推薦する.
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●選挙運動におけるAI 利用の規制 —アメリカにおけるディープフェイク規制を中心にー
[2024-EIP-103(2024/2/15)](電子化知的財産・社会基盤研究会)
 yuasa

湯淺 墾道 君 (正会員)

1994年 青山学院大学法学部 卒業.
2008年 九州国際大学法学部教授,副学長.
2011年 情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科 教授.
2021年 明治大学専門職大学院ガバナンス研究科教授,現在に至る.

[推薦理由] 世論誘導や選挙干渉を目的としたディスインフォメーションが各国で問題となっているなか,アメリカにおいては選挙運動期間中における AI を利用したディープフェイクの作成や流布を州法で規制する動きがある.本報告は,これらの規制および議論動向を精緻に調査し,日本の公職選挙法その他の関連制度のあり方を考察したものであり,EIP 研究会のテーマとして意義の大きいものと認めるため,推薦する
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●4 × 3盤面の2048の完全解析
[ゲームプログラミングワークショップ(GPWS2023)(2023/11/17)](ゲーム情報学研究会)
 yamashita

山下 修平 君 (正会員)

2022年3月 東京大学教養学部学際科学科 卒業.
2024年3月 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 修士課程 修了.
2024年4月 三菱電機株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 1人用ゲーム 2048 は,単純なルールでも高得点を獲得することは難しい奥深いゲームで,確率的環境での強化学習の性能評価の題材として国際的にも注目されている.この研究ではかける の盤面をもつ 2048 を 列縮小した,かける の大きさ盤面のバリエーションについて完全解析を行った.ゲームの性質を利用して重複を効率的に検知する技術を提案し,それを踏まえて 1,152,817,492,752 通りに及ぶ状態を列挙し,それぞれの期待得点や最適行動を明らかにした.これによりある程度大規模な強化学習で訓練されたエージェントが理論的最適にどの程度近づいたかを議論することが可能となった.以上を総合して受賞に相応しいと判断し,推薦する
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●2人完全情報零和ゲーム「PYLOS」の子供用,通常,上級ルールでの強解決
[2024-GI-51(2024/3/9)](ゲーム情報学研究会)
 sannou

三納 侑樹 君 (学生会員)

2024年3月 電気通信大学情報理工学学域 卒業.
2024年4月 電気通信大学大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻 修士課程 入学.

[推薦理由] ボードゲーム「PYLOS」の最適戦略を探求した研究を20243月のゲーム情報学研究会で発表した三納侑樹氏を推薦する.彼の研究は,該当のゲームの上級・中級・初級者用の3種のルールで「強解決」するという難関を突破した.強解決とは,ゲームにおける全ての可能な状況に対して最適な行動を求めることであり,この目標を達成したゲームは少数に限られている.PYLOS は,広く知られている強解決済みのゲーム「Awari」に準ずる規模の状態空間を有している.三納氏の GPW での発表は,ゲーム情報学の発展に寄与していると評価でき,彼に賞を授与するのが適当であると考える.
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●英会話はハートがすべてなんで!?キャンユースピークイングリッシュ?
[エンタテインメントコンピューティング2022(EC2023)(2023/9/1)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
 yamanishi

山西 良典  君 (正会員)

2007年 名古屋工業大学工学部知能情報システム学科 卒業.
2009年 名古屋工業大学大学院工学研究科情報工学専攻 博士前期課程 修了.
2012年 名古屋工業大学大学院工学研究科情報工学専攻 博士後期課程 修了.博士(工学).
2012年〜2020年 立命館大学情報理工学部にて助手,特任助教,助教,講師.この間,UBC(Canada)客員助教.
2020年 関西大学総合情報学部 准教授.
2024年 同教授.

[推薦理由] 本論文は出川イングリッシュにおける演出を英会話練習のしくみとして取り入れることで非ネイティヴ英語話者にとっての会話に適した作文能力の向上をねらうものである.日本テレビ制作の世界の果てまでイッテQ!内の人気企画「出川哲朗はじめてのおつかい」では出川氏のネイティヴ英語話者との会話がエンタテインメントとして楽しまれている.日本国内の標準的な英語能力からすれば多くの視聴者は出川氏の英会話の拙さやネイティヴ話者との認識の齟齬を直接理解しているわけではなく番組内の演出を補助情報として受け取ることで英会話におけるミスコミュニケーションをエンタテインメントとして楽しんでいるものと推察される.この番組内の演出を英会話教育における非言語フィードバックとして利用することで英会話学習者に楽しみながら自己研鑽する機会を提供するシステムを提案し評価実験を行っている.本研究は英会話学習に新しい形のエンタテインメント性を導入することを提案するものであり後続研究を刺激しエンタテインメントコンピューティング分野に一石を投じる可能性を秘めている
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●Protein-compound interaction prediction using microbial chemical communication network
[2023-BIO-76(2023/11/29)](バイオ情報学研究会)
 saito

齋藤  裕 君 (正会員)

2008年 慶應義塾大学理工学部 卒業
2010年 慶應義塾大学大学院理工学研究科 修士課程 修了
2012年 慶應義塾大学大学院理工学研究科 博士課程 修了 博士(理学)
2012年 産業技術総合研究所 産総研特別研究員
2015年 産業技術総合研究所 研究員
2019年 産業技術総合研究所 主任研究員
2024年 産業技術総合研究所 特定フェロー(クロスアポイントメント) 現在に至る
2024年 北里大学未来工学部 教授 現在に至る
(兼務)
2019年 東京大学大学院新領域創成科学研究科 客員准教授 現在に至る

[推薦理由] 自然界における化合物と微生物の相互作用からなるネットワークに着目し,ネットワーク表現学習を用いて化合物の特徴抽出を行う新規手法を開発した.この特徴量を化合物—タンパク質相互作用予測に取り入れ,予測精度を向上することに成功した.また,メタゲノムデータから得られる微生物間の共起関係をネットワークに取り入れ特徴量を改良する方法も開発した.本研究は化合物—微生物微生物—微生物といった生態系に関するネットワーク情報をケモインフォマティクスに利用するための新しいアプローチを提示しており創薬に大きな影響を与える可能性がある.以上のことから,山下記念研究賞に相応しいものとしてバイオ情報学研究会より推薦する
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●Comfortable Sakai によるSakai LMSの機能改善およびユーザ評価
[2024-CLE-42 (2024/3/23)](教育学習支援情報システム研究会)
 takeda

武田 和樹 君 (学生会員)

2023年3月 京都大学工学部電気電子工学科 卒業.
2023年4月 京都大学大学院情報学研究科通信情報システムコース 入学.
次世代の無線通信システム(Beyond 5G/6G移動通信システム)に関する研究に従事.

[推薦理由] 本論文では,Sakai LMS の機能を改善するために開発したブラウザ拡張機能「Comfortable Sakai」について報告している.学生主体で開発された大学固有の拡張機能「Comfortable PandA」に国際化・地域化対応を加え,主要機能を維持しながらも大学固有の依存関係を排除した汎用ツールへと改良している.また,アンケート調査によるユーザーからの評価についても検討している.開発されたツールは実際の教育現場で広く利用されており,今後も更なる改良や拡張性も期待できる.以上のことから,山下記念研究賞に相応しいものとして CLE研究会より推薦する
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●介護施設の雰囲気向上に着目した介護支援技術評価指標の開発
[2024-AAC-24(2024/3/19)](アクセシビリティ研究会)
 hiraga

平賀 暉章 君 (正会員)

2022年3月 岡山大学工学部機械システム系学科システム工学コース 卒業.
2024年3月 東京工業大学環境社会理工学院 技術経営専門職学位課程 修了.
2024年4月 沖電気工業株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,情報技術の受容性評価に多用されている技術受容モデルを改善するため,介護職員並びに職場雰囲気にとっての有用性を評価に加えたものである.研究デザインから評価に至るまで丁寧に実施されており,アクセシビリティならびに支援技術分野の研究の見本となる内容であったため,ここに推薦する.
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